クラウド移行とは?オンプレミスからの進め方とメリット・デメリットを解説

クラウド移行とは?オンプレミスからの進め方とメリット・デメリットを解説
クラウド移行とは?オンプレミスからの進め方とメリット・デメリットを解説

サーバーの老朽化や保守の負担、社外からのアクセスへの対応を背景に、クラウド移行を検討する企業が増えています。ただ、何をどこまで移せばよいのかが見えにくく、自社に合った進め方を判断しきれないケースは少なくありません。実際には、クラウド移行はサーバーの置き場所を変えるだけでなく、ITの運用のあり方を見直す取り組みです。

本記事では、メリットとデメリット、移行すべきシステムの見極め方や進め方、移行先の選び方、ファイルデータの移行方法までを解説します。

本記事のサマリ

  • クラウド移行は、オンプレミスのシステムやデータをクラウドへ移し、運用のあり方まで見直す取り組みである
  • 設備投資や保守の負担を減らせる一方、想定外のコストや利用企業側のセキュリティ責任は残る
  • システムごとに移行・維持・廃止を見極め、目的と切り戻しの基準を定めて段階的に進める必要がある
  • 同じ操作感や移行支援、操作ログを備えたDirectCloudなら、負担を抑えてファイルデータを移せる

クラウド移行とは?オンプレミスとの違い

クラウド移行とは、オンプレミス環境(自社で機器を保有・運用する形態)のシステムやデータを、クラウド事業者が提供する環境へ移すことです。本記事は法人の業務システムとデータを扱い、個人のスマートフォンやパソコンのデータ移行は対象外とします。

自社で保有する機器の老朽化や保守の負担を背景に、企業のクラウド利用は広がっています。総務省の令和7年通信利用動向調査によると、常用雇用者100人以上の企業のうち、クラウドサービスを全社的または一部の部門で利用する企業は83.5%に上りました。

移行の定義と対象、オンプレミスとの違い、クラウドの種類を順に説明します。

参照元:総務省|令和7年通信利用動向調査の結果

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クラウド移行の定義と移行の対象

クラウド移行で移す対象は、データ・アプリケーション・ITインフラを含むIT資産全般です。具体的には、社内のサーバーやデータベース、業務アプリケーション、ストレージ上の業務データなどが該当します。たとえば社内サーバーの勤怠管理システムを移す場合、アプリケーション本体と打刻記録を保存したデータベースの両方が対象に含まれます。

移行後、企業は物理的な機器を自社で保有・管理しなくて済みます。クラウド移行はサーバーの置き場所を変える作業にとどまらず、ITの運用のあり方を見直す取り組みでもあります。

オンプレミスとクラウドの違い

オンプレミスとクラウドの違いは、費用の払い方と、運用やセキュリティの担い手に表れます。初期費用からカスタマイズ性まで、7つの比較項目で違いを下表にまとめました。

比較項目 オンプレミス クラウド
初期費用 サーバーなどの機器購入・構築費用が発生する 機器の購入が不要で、利用料として支払う
費用の構造 保守・運用費が継続的に発生する 利用量に応じた従量課金が中心
導入までの期間 機器の調達・構築に時間がかかる 契約後、短期間で利用を始められる
拡張性 ハードウェアの増設が必要 必要に応じてリソースを追加できる
運用・保守の担い手 すべて自社で管理する 基盤部分はクラウド事業者が担う
セキュリティの責任 すべて自社の責任 事業者と利用企業で分担する(責任共有モデル)
カスタマイズ性 自社要件に合わせて構築できる サービス仕様の範囲内に限られる

表中の責任共有モデルとは、基盤部分を事業者が、データやアクセス権限の管理を利用企業が受け持つ分担の考え方です。また、表の「費用の構造」はIaaSやPaaSに多い形で、SaaSには利用者数に応じた課金や、毎月定額の料金体系をとるサービスもあります。両者に優劣はなく、自社の要件によって適する形態が変わります。

たとえば繁忙期だけ利用者が急増する採用応募の受付システムには、リソースを追加しやすいクラウドが向いています。一方、社内の専用機器と直結した設備制御システムは、オンプレミスに残す選択もありえます。

移行先となるクラウドの種類

移行先のクラウドは、事業者が提供する範囲によって3種類に分かれます。IaaS(Infrastructure as a Service)はサーバーやネットワークなどの基盤を、PaaS(Platform as a Service)はアプリケーションの開発・実行環境を、SaaS(Software as a Service)は完成したソフトウェアをインターネット経由で提供します。

自社で管理する範囲はIaaS、PaaS、SaaSの順に狭くなり、運用の手間が減る代わりに構成を変えられる自由度も下がります。このほか、事業者の基盤を複数の利用者で共有するパブリッククラウドと、自社専用の環境を用いるプライベートクラウドという区分もあります。後者の詳細は、よくある質問で扱います。

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クラウド移行のメリット

クラウド移行で企業が得られるメリットは、大きく4つあります。先に挙げた総務省の令和7年通信利用動向調査では、クラウドサービスの利用理由(複数回答)として「場所、機器を選ばずに利用できるから」が50.7%、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」が42.8%、「災害時のバックアップとして利用できるから」が38.7%挙がっています。

設備と保守の負担軽減、リソースの増減、場所を問わない利用、災害への備えの順に説明します。

クラウド移行で得られる4つのメリット
クラウド移行で得られる4つのメリット

参照元:総務省|令和7年通信利用動向調査 ポイント(別紙1)

設備投資と運用保守の負担を減らせる

サーバーなどの機器の購入費や設置スペース、電力といった設備投資は、クラウドへ移行すると不要になり、費用は利用料として支払う形に変わります。運用面でも、ハードウェアの保守や障害対応、老朽化に伴う機器の更新といった基盤部分の作業は、クラウド事業者が担います。

たとえば、数年ごとのサーバー更新のたびに機種選定から設定の移し替えまで担っていた担当者は、その工数を社内のIT活用の企画などに振り向けられます。情報システム部門が本来の業務に時間を使えるようになる点は、費用の削減と並ぶ大きな効果です。

需要に応じてリソースを柔軟に増減できる

事業の拡大や繁忙期に合わせて、クラウドならサーバーの性能や容量を短期間で増やし、不要になれば減らせます。オンプレミスでは数年先の最大需要を見込んで設備を用意するため、需要が届くまでの空き容量にも費用がかかり、見込みを超えれば機器の買い替えも必要です。

たとえば決算期だけ処理が集中する会計システムなら、その期間だけ性能を上げ、終われば戻す運用ができます。先の調査でも、利用理由のうち「システムの拡張性が高いから(スケーラビリティ)」は28.9%と前年の22.1%から伸び、増加幅は全項目で最大でした。

参照元:総務省|令和7年通信利用動向調査 ポイント(別紙1)

場所や端末を問わず業務システムを使える

インターネット経由で利用するクラウドなら、在宅勤務や外出先、複数の拠点から同じシステムやデータにアクセスできます。オンプレミスのサーバーは社内ネットワークでの利用が基本で、社外からはVPN(社外と社内ネットワークを暗号化してつなぐ仕組み)を経由するなどの手順が必要となり、業務が煩雑になりがちでした。

クラウドへ移行すれば、たとえば現場に出ている点検担当者が、社内に問い合わせることなく点検マニュアルの最新版を開けます。総務省の同調査ではテレワークを導入している企業が50.1%に達しており、社外から使える業務システムの必要性は高まっています。

参照元:総務省|令和7年通信利用動向調査 ポイント(別紙1)

災害時も事業を継続しやすくなる

自社の拠点が地震などで被災しても、クラウドならデータやシステムを使い続けやすくなります。クラウド事業者は、地理的に離れた複数のデータセンターやデータの多重バックアップを備えているためです。オンプレミスで同じ備えをするには、遠隔地にバックアップ用の拠点を自社で構築・維持しなければなりません。

クラウドを使えば、その負担を抑えながらBCP(事業継続計画)を整えられます。ただし、設備の多重化(冗長化)やバックアップがどこまで標準で提供されるかはサービスごとに異なり、有料オプションの場合もあるため、契約前の確認が欠かせません。

クラウド移行のデメリットと注意点

先に挙げたメリットだけを見て移行を進めると、移行後に費用や運用の負担が想定を上回るおそれがあります。オンプレミスで機器の調達や保守に費やしていた手間が、クラウドでは利用量の管理や設定の確認といった別の仕事に置き換わるためです。

費用の見積もり、セキュリティの責任範囲、既存システムとの連携、運用を担う人材と体制の4つについて、移行前に確認しておきたいデメリットと注意点を説明します。

クラウド移行前に確認したい4つの課題
クラウド移行前に確認したい4つの課題

想定外のコストが発生しやすい

使った分だけ支払う従量課金のクラウドでは、利用量の見積もりが甘いと、運用開始後の費用がオンプレミスを上回る場合があります。見落とされがちな費用としては、データの転送量に応じて発生する転送料、移行期間中に新旧の環境を並行して動かす二重コスト、利用者への操作教育の費用などが挙げられます。

たとえば、動画素材を社外の映像制作先と頻繁にやり取りする広報部門では、転送料がかさみます。比較はクラウド利用料だけでなく、移行費用と5年程度の運用費を含めたTCO(総所有コスト)で行う必要があります。

試算には、クラウドの利用料と移行作業費のほか、並行稼働期間の旧環境の維持費、転送料、操作教育の費用、移行後の運用を担う人員の工数まで含めると、見積もりの漏れを防げます。

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利用企業側のセキュリティ責任は残る

セキュリティの面では、先に触れた責任共有モデルに基づき、クラウド事業者と利用企業が責任を分担します。利用企業が受け持つ範囲はSaaS・PaaS・IaaSの利用形態で変わり、総務省の「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン」では、IaaSなら仮想環境上で動くOSを含むすべてのソフトウェアの管理が利用者の責任とされています。

SaaSであっても、利用者アカウントや業務データの設定は利用企業の責任です。同ガイドラインは、アクセス管理の設定不備による個人情報の公開や、退職者のIDを失効させずに放置したことによる不正利用を、設定不備のリスクとして挙げています。

参照元:総務省|クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要

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既存システムとの連携や独自仕様が制約になる

長年オンプレミスで運用してきたシステムは、特定のハードウェアや独自仕様に依存していると、そのままではクラウドへ移せない場合も少なくありません。一部のシステムだけをクラウド化した場合も、オンプレミスに残るシステムとのデータ連携や通信の遅延が課題になります。

たとえば受注システムだけをクラウドへ移して在庫管理を社内に残すと、両者のデータの受け渡しに時間がかかり、在庫数の反映が遅れかねません。また、クラウドはサービス仕様の範囲内でしか設定できないため、自社独自の機能や画面を再現しにくい場合もあります。

クラウドを運用できる人材と体制が必要になる

移行後も、利用企業側で担う運用業務はなくなりません。設定や利用料の管理、障害が起きた際に事業者へ何を確認しどう判断するかは、社内の役割として残ります。総務省の同ガイドラインも、利用側に求められる対策として組織体制の整備と人材育成を挙げ、設定に関するリテラシーや技術力の向上を求めています。

社内に知見が不足する場合は、計画段階から教育や外部支援を組み込む必要があります。たとえば、移行の日程に担当者の研修期間を組み込めば、本番移行の時点で運用の判断を担える体制を整えられます。

参照元:総務省|クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドラインの概要

移行すべきシステムの見極め方

クラウド移行は、すべてのシステムを一律に移す取り組みではありません。システムごとに、移行・維持・廃止のいずれが適しているかを判断する必要があります。判断の観点は、コスト削減効果、運用負荷の削減効果、社外からのアクセスの必要性、拡張性、セキュリティ要件の5つです。

たとえばコスト削減効果なら、移行作業の費用を差し引いても運用費が下がるかを確かめます。優先して移す候補、残す・廃止する選択肢、ファイルデータ固有の確認事項の順に説明します。

優先して移行を検討すべきシステム

移行の優先候補になるのは、クラウドの強みがそのまま効果につながるシステムです。具体的には、需要の変動が大きいシステム、社外や複数の拠点から利用するシステム、保守期限が近い機器で動いているシステムが挙げられます。

たとえば、来年メーカーの保守が切れるサーバーで経費精算システムを動かしている場合、機器を買い替える代わりに移行を検討する価値があります。インフラ保守の担当者が不足している企業や、BCPを強化したい企業も、移行の効果が出やすくなります。

なかでもファイルサーバーは、社外や複数の拠点から使われることが多く、老朽化した機器で運用を続けている例も少なくありません。ほかのシステムとの連携も比較的少ないため、最初の移行対象として検討しやすい代表例です。移行の準備は、このあと説明するファイルデータ固有の確認事項に沿って進めます。

オンプレミスに残す・廃止する選択肢

特殊なハードウェアへの依存が強いシステム、法規制上クラウドの利用に制約があるシステム、移行費用が効果を上回る安定稼働中のシステムは、当面オンプレミスで維持する判断も成り立ちます。

棚卸しで利用実態のないシステムが見つかった場合は、移行せずに廃止する選択肢もあります。たとえば、終了した企画のために作られ、今は誰もログインしていない集計システムに移行費用をかける理由はありません。維持を選んだ場合も、機器やソフトウェアの保守期限を確認し、移行の要否を定期的に見直す必要があります。

ファイルデータは固有の確認事項を押さえる

ファイルサーバーやNAS(ネットワークに接続して使うファイル保存用の機器)に保存された業務データは、システムとは別の観点で移行の準備が欠かせません。部署ごとに設定したアクセス権や長年積み重なったフォルダ構成を伴い、ファイルの件数も膨大になりやすいためです。

たとえば、10年分の案件資料が入った共有フォルダでは、権限の再現と不要データの見極めだけで相応の時間がかかります。移行前に確認したい観点は、次の5つです。

  • ●フォルダごとのアクセス権を移行先でも再現できるか
  • ●現在のフォルダ構成のまま移せるか、1フォルダあたりのファイル件数が移行先の制約に収まるか
  • ●パスの長さやファイル名の禁則文字が移行先の制約に抵触しないか
  • ●不要・重複データを整理し、移行対象のデータ量を絞り込めているか
  • ●データ量に対して回線の帯域と移行期間が足りるか

各項目の具体的な作業手順は関連記事で説明しており、本記事では確認の観点を示すにとどめます。社内で確認しきれない場合は、既存データの調査から依頼できる移行サービスを使う方法もあります。

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クラウド移行の7つの手法(7R)

クラウド移行の手法は、Amazon Web Services(AWS)が示す7つの戦略「7R」から選べます。先の見極めで決めた移行・維持・廃止の方針を手法に落とし込めるよう、各手法の概要と選ぶ場面の例を下表にまとめました。

手法 概要 選ぶ場面の例
リホスト(リフトアンドシフト) アプリケーションを変更せずにクラウドへ移す 早期の移行を優先したい
リロケート 仮想化基盤ごと、同じプラットフォームのクラウドへ移す VMwareなどの仮想環境をそのまま移したい
リプラットフォーム(リフトアンドリシェイプ) 一部をクラウドのマネージドサービスなどに置き換えて移す 運用負荷を下げながら移行したい
リファクタリング(リアーキテクト) クラウドの特性を活かす設計に作り直す 拡張性や俊敏性を長期的に高めたい
リパーチェス(再購入) 既存システムをSaaSなど別の製品に置き換える SaaSで業務要件を満たせる
リタイア 不要なシステムを廃止する 棚卸しで利用実態がないと分かった
リテイン(保持) 当面はオンプレミスで維持する 移行の優先度が低い、または制約がある

リタイアとリテインは、「残す・廃止する」判断に対応します。手法はシステムごとに選び、まずリホストで移して、安定後に最適化する方法もあります。

国内では、構成を変えずに移す「クラウドリフト」(リホストなど)と、最適化して移す「クラウドシフト」(リプラットフォームやリファクタリングなど)という呼び方も使われます。ファイルサーバーをクラウドストレージ(SaaS)に置き換える移行は、リパーチェスに当たります。

クラウド移行の進め方

クラウド移行は、目的の設定から移行後の運用までを5つのステップで進めます。手順を省いて本番移行に入ると、移行後に効果を説明できなかったり、トラブルの際に元の環境へ戻せなかったりするおそれがあります。

クラウド移行を進める5つのステップ
クラウド移行を進める5つのステップ

移行の目的とゴールを決める

最初のステップでは、コスト削減、運用負荷の軽減、BCPの強化など、移行で解決したい課題を明確にします。目的によって、移行するシステムの優先度や手法が変わるためです。そのうえで、効果を検証できるよう目標値(KPI:達成度を測る指標)と移行完了の条件を設定します。

たとえば「サーバーの保守費を3年で半減する」「全拠点のデータ移行と旧サーバーの停止をもって完了とする」のように数値と状態で示すと、後から検証しやすくなります。決めた内容は、経営層・情報システム部門・利用部門で共有します。

IT資産を棚卸しする

次に、移行の判断材料となるIT資産を棚卸しします。洗い出す項目は、システムの一覧、ハードウェアとソフトウェアの構成、システム間の依存関係、保守期限、データ量などです。依存関係はどのシステムを同時に移すべきかを、保守期限は移行をどれだけ急ぐべきかを判断する材料になります。

洗い出した情報には、「移行すべきシステムの見極め方」で示した観点を当てはめ、システムごとに移行・維持・廃止を仕分けます。最後に、業務への影響やリスクを踏まえて移行の優先順位を決めます。

移行計画を策定する

棚卸しの結果をもとに、移行先のサービスと手法(7R)、移行の順序、スケジュール、予算、担当者を決めます。順序は、影響度や利用者数が少ないシステムから始めると、得た知見を大きなシステムに活かせます。移行作業中のトラブルに備え、元の環境に戻す切り戻しの基準と手順もあらかじめ定めておきます。

たとえば「始業2時間前までにデータの照合が終わらなければ旧環境に戻す」と時刻で決めておけば、判断に迷いません。計画は関係部門に共有し、月末の締め処理や繁忙期など業務への影響が大きい時期を避けて日程を組みます。

テスト移行とリハーサルで検証する

計画が固まったら、影響の小さいシステムやデータで試験的に移行します。確認するのは、性能、セキュリティ、既存システムとの連携、利用者にとっての操作性です。たとえば、1部署分の共有データだけを先に移して担当者に1週間使ってもらえば、ファイルを開く速さや権限の過不足を実務の中で確かめられます。

本番前にはリハーサルを行い、手順や所要時間、想定外の問題を洗い出します。リハーサルで問題が見つかることは珍しくないため、対策を講じる期間も日程に含めておく必要があります。

本番移行後も運用を最適化する

本番移行は業務への影響が少ない夜間や週末に行い、移行後は動作確認で業務に支障がないかを確かめます。旧環境の停止や解約は、移行の完了と安定稼働を確認してから行います。先に解約すると、トラブルが起きた際に切り戻せなくなるためです。

移行後も、リソースの使用状況やコスト、セキュリティ設定を定期的に見直し、継続的に最適化します。たとえば四半期ごとに利用料の内訳と権限設定の一覧を点検する場を設ければ、使われていない領域への支出や設定の漏れに早く気づけます。

クラウド移行を成功させるポイント

クラウド移行の成否は、技術的な作業の出来だけでは決まりません。移行の範囲をどう広げるか、利用部門の協力をどう得るか、社内に足りない人手やノウハウをどう補うかによって、移行後の定着や費用の膨らみ方が変わるためです。

進め方の手順と並行して意識しておきたい3つの考え方として、部署や拠点単位での段階的な拡大、利用部門との目的の共有、移行支援サービスの活用を説明します。

クラウド移行を成功させる3つのポイント
クラウド移行を成功させる3つのポイント

部署・拠点単位で段階的に範囲を広げる

全社のシステムを一度に移すより、部署や拠点ごとに小さな範囲から始めて段階的に広げたほうが、業務への影響とリスクを抑えられます。問題が起きても影響が一部にとどまり、早い段階で原因を突き止めて対処できるためです。

たとえば、本社の総務部から始めて関東の拠点、全国の拠点へと広げる進め方があります。先行した総務部で見つかった権限設定の漏れや問い合わせの傾向は、次の拠点の手順書や研修内容に反映できます。先行範囲で得た知見を次の移行対象に活かせる点も、段階的に進める強みです。

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利用部門と目的を共有し協力を得る

クラウド移行は、情報システム部門だけでは完結しません。業務フローや操作方法が変わる利用部門の理解がないまま進めると、移行後に反発を受けたり、新しい環境が使われなかったりするおそれがあります。計画の初期段階から利用部門の代表者を巻き込み、移行の目的と効果を共有しておきましょう。

新しい操作に慣れるまでは業務効率が下がりやすいため、操作研修や問い合わせ窓口を用意します。普段のファイル操作と同じ手順で使える移行先を選び、操作方法の変化を小さく抑えることも有効です。

移行支援サービスを活用する

社内の人員やノウハウが不足する場合は、移行作業や計画立案を外部の専門事業者に任せる選択肢があります。支援事業者を選ぶ際は、移行の実績、移行後の支援体制、契約条件の透明性を比べます。初期費用が安くても、移行後のサポートが手薄だったり、追加費用が後から膨らんだりする場合があるためです。

また、先に挙げた総務省のガイドラインは、外部の事業者が設定作業を行っても最終的な責任は利用企業に残るとしています。どの作業をどこまで任せるのか、委託範囲と責任分担を契約で明確にしておきます。

移行先クラウドサービスの選び方

移行先のクラウドサービスを機能や月額料金だけで選ぶと、移行後にセキュリティやサポートの不足に気づく場合があります。複数のサービスを同じ物差しで比べられるよう、確認したい選定基準を下表にまとめました。

選定基準 確認する内容
セキュリティ対策 アクセス制御や暗号化の仕組みがあり、ISO27001などの第三者認証を取得しているか
データの保存場所 データセンターの所在地域が、自社の規程や取引先との契約が求める条件を満たすか
SLA(品質保証) 稼働率の保証値など、サービス品質の水準が契約で示されているか
サポート体制 障害時の問い合わせ手段や対応時間が、自社の業務時間に合っているか
料金体系 従量課金か定額制か、転送料や初期費用を含めた総費用が予算に収まるか
移行の手段 既存データを移すツールや、移行を代行するサービスが用意されているか

とくにSLA(サービス品質の保証水準を定めた契約)は、障害時に業務が止まる時間の上限を見積もる手がかりになります。たとえば30日の月なら、稼働率の保証値が99.9%で約43分、99.95%で約22分が、許容される停止時間の目安です。

セキュリティ認証やデータの保存場所は、自社の情報セキュリティ規程と照らし合わせて確認しておきましょう。

DirectCloudで進めるファイルデータの移行

本記事で取り上げた課題のうち、ファイルデータの移行に関わるものは、法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」の機能と移行支援サービスで解決を支援できます。前章の選定基準に照らすと、DirectCloudは情報セキュリティマネジメントの国際規格ISO/IEC 27001と、クラウドサービス向けの管理策を定めたISO/IEC 27017の認証を取得しています。

サーバーにはAWSの東京リージョンを利用し、月間99.95%の稼働率保証値を定めています。料金はユーザー数無制限の定額制のため、利用者数の増減を気にせず使えます。

利用部門の操作の負担、移行作業の人手不足、段階的な移行、利用企業側の権限管理について、本文の課題とDirectCloudの機能・サービスの対応を下表にまとめました。

本文で扱った課題 DirectCloudの機能・サービス 該当する見出し
利用部門の操作習熟の負担(利用部門と目的を共有し協力を得る)、フォルダ構成を保ったまま移したい(ファイルデータは固有の確認事項を押さえる) DirectCloudドライブ(エクスプローラー操作、ドライブ文字の割り当て) ファイルサーバーと同じ操作感で移行できる
運用できる人材と体制が足りない(クラウドを運用できる人材と体制が必要になる)、移行支援を活用したい(移行支援サービスを活用する) データ移行サービス、DCMigrator、Data Migration Box 移行作業を代行サービスやツールに任せられる
小さく始めて段階的に移行範囲を広げたい(部署・拠点単位で段階的に範囲を広げる) DirectCloud Gateway NASを残したまま段階的に移行できる
アカウントやアクセス権の管理は利用企業の責任(利用企業側のセキュリティ責任は残る) アクセス制御、250種類以上の操作ログ、CSV一括登録、Active Directory連携 権限と操作ログで利用企業側の統制を担保できる

参照元:DirectCloud|DirectCloud 利用でのISO27001(ISMS) 認証クラウドセキュリティ

安全かつシンプルなデータ管理と生成AIの活用をサポート

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ファイルサーバーと同じ操作感で移行できる

DirectCloudドライブを使うと、WindowsのエクスプローラーやMacのFinderから、クラウド上のファイルを直接操作できます。Windows環境ではドライブ文字を割り当てられるため、従来のファイルサーバーと同じフォルダパスのまま使えます。

これまで「Sドライブ」の部署フォルダから資料を開いていた利用者は、移行後も同じ場所から同じ手順で資料にたどり着けます。操作がほとんど変わらないため、利用者が慣れるまでの負担や、情報システム部門による操作説明の手間を抑えられます。

参照元:DirectCloud|エンタープライズ企業のDXをクラウドストレージでサポート

移行作業を代行サービスやツールに任せられる

社内に移行の人手やノウハウが足りない企業に向けて、当社は「DirectCloudへのデータ移行サービス」をご用意しています。NASや社内サーバーにある既存データの調査から移行計画の立案、移行作業までを代行するサービスで、料金は移行元やデータの状況、ご依頼の内容に応じて個別にお見積りします。

自社で移行する場合は、増分コピー(変更分だけの追加複製)とファイル数無制限に対応したエンタープライズプラン向けの専用ツール「DCMigrator」や、株式会社ジャングルが提供する移行ツール「Data Migration Box」もお使いいただけます。

移行に合わせたユーザー情報の登録やアクセス権の設定も依頼できるため、確認事項に挙げたフォルダごとの権限の再現も任せられます。公式サイトに掲載している納期の目安は、データ量1TBで5営業日、10TBで40営業日です。実際の納期は、ファイルの個数や通信速度によって変わります。

参照元:DirectCloud|DirectCloudへのデータ移行サービス

参照元:DirectCloud|DCMigrator|DirectCloud専用データマイグレーションツール

参照元:DirectCloud|「Data Migration Box」がDirectCloudに対応

NASを残したまま段階的に移行できる

既存のNASを残したまま移行を進めるなら、DirectCloud Gatewayが使えます。NASとDirectCloudを連携させるハイブリッドストレージで、社内ではNAS、社外ではVPNを経由せずにDirectCloudからファイルを利用できます。

既存のフォルダ構成や社内の運用を活かしたまま、部署・用途・拠点ごとに段階的にクラウド化を進められます。NASのデータはDirectCloudへ自動で保存されるため、NASが故障や災害で止まった場合も、クラウド側に切り替えて必要なファイルを開けます。

参照元:DirectCloud|DirectCloud Gateway|NAS × クラウドのハイブリッドストレージ

権限と操作ログで利用企業側の統制を担保できる

クラウドへ移行しても、アカウントとアクセス権の管理は利用企業の責任として残ります。DirectCloudは、アクセス制御の個別設定、登録した端末に利用を限るデバイス認証、接続元を限定するIPアドレス制限などで、管理者がその管理を担える仕組みを備えています。

CSVによる一括登録ではアカウントの有効・無効や有効期限も設定でき、Active Directory(Microsoft Entra IDを含む)と連携した認証にも対応しています。人事異動や退職に合わせてアカウントを止める運用を組みやすく、退職者のIDが放置されるリスクを抑えられます。

250種類以上の操作ログも取得でき、誰がいつどのファイルを操作したかを追跡できます。たとえば、退職予定者が短期間に大量のファイルをダウンロードした場合も、ログから日時と対象のファイルを特定できます。

参照元:DirectCloud|管理者機能

オンプレミスからDirectCloudへ移行した事例

オンプレミスのファイルサーバーからDirectCloudへ移行し、ご利用いただいているお客さまの事例を3つ取り上げ紹介します。3社とも、サーバーの老朽化や保守の負担、社外からアクセスできないといった、本記事で扱った課題を抱えていました。ぜひ、移行の進め方や機能を選ぶ際の判断材料としてご覧ください。

老朽化したサーバーから完全移行し容量も柔軟に拡充

電子部品を中心に国内外で物流を手がける株式会社アルプス物流様では、約7年使ってきたオンプレミスのファイルサーバーが老朽化していました。容量を増やすたびに工数と投資コストがかかり、文書検索機能もないため、必要なファイルをすぐに探し出せないことも課題でした。

DirectCloudへの完全移行により、オンプレミスのファイルサーバーから脱却しています。必要に応じてストレージ容量を拡充できる体制が整い、文書検索機能で必要なファイルを瞬時に探せるようになりました。災害対策・遠隔地バックアップ機能(有料オプション)も導入し、被災時にも24時間以内にデータを戻せる体制を整えて、BCPを強化しています。

自社運用サーバーの保守から離れ社外でも業務が可能に

梅酒や梅関連製品を製造・販売するチョーヤ梅酒株式会社様では、CentOS(Linux系のOS)とSamba(Windowsとファイルを共有するためのソフトウェア)で構築したファイルサーバーを自社で保守・運用していました。社外からアクセスできないことは、営業活動のボトルネックでもありました。海外拠点や取引先とのファイル共有も、PPAP(パスワード付きZIPファイルのメール送付)だけで行っていました。

移行後はシステム担当者のサーバー管理工数が減り、社内外を問わず必要なファイルにアクセスできるようになりました。海外拠点や取引先とも、共有リンクで円滑にファイルをやり取りしています。

複数の社内サーバーを撤去し社外勤務者とも円滑に共有

東洋エンジニアリンググループの一員として人材サービスなどを手がけるテックビジネスサービス株式会社様では、各所に分散して働く社外勤務者との情報共有に課題がありました。取引先とのデータのやり取りはメールが中心で手間がかかり、増え続けるデータ容量への対応も難しい状況でした。

移行後は、社外勤務者や取引先とのファイル共有が円滑になっています。社内のファイルサーバー、バックアップサーバー、操作ログサーバー、Active Directoryサーバー(社内アカウントを一元管理する認証サーバー)も撤去できました。

クラウド移行に関するよくある質問

本文の補足として、クラウド移行を検討する際によく寄せられる3つの質問にお答えします。クラウド同士の乗り換え、プライベートクラウドの扱い、オンプレミスとの併用について、移行計画を立てる前に知っておきたい内容を簡潔にまとめました。

  • クラウドから別のクラウドへ移行できますか?

  • できます。クラウド移行には、オンプレミスからクラウドへの移行に限らず、あるクラウド環境から別のクラウド環境へ移す「クラウド間移行」も含まれます。料金体系の見直しや、必要な機能を求めてサービスを乗り換える企業もあります。

    乗り換える際は、移行先が対応する移行ツールがあるか、データをどの手段で移すかを事前に確かめておきましょう。たとえば、DirectCloudに対応するData Migration Boxは、クラウド間のデータ移行にも使えます。
  • プライベートクラウドへの移行も含まれますか?

  • 含まれます。自社専用のクラウド環境であるプライベートクラウドへの移行も、クラウド移行の一形態です。プライベートクラウドには、事業者のデータセンターに自社専用の環境を構築する「ホスティング型」と、自社の施設内にサーバーなどを設置して構築する「オンプレミス型」があります。

    オンプレミス型は機器の調達や保守を自社で担うため、初期投資や運用の負担は従来のオンプレミスに近くなります。
  • オンプレミスと併用しながら移行できますか?

  • 可能です。すべてを一度に移さず、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドの状態を経ながら移行する進め方もあります。併用期間中は、両方の環境を結ぶネットワークの設計が欠かせません。通信の遅延でデータの受け渡しが滞らないよう、事前に検証します。

    どのデータをどちらに置くかも決めておく必要があります。たとえば、社外秘の研究データはオンプレミスに残し、取引先と共有する提案資料はクラウドへ移すといった線引きです。
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まとめ

クラウド移行は、機器の老朽化や保守の負担、社外からのアクセスといったオンプレミスの課題を解消する有効な手段です。ただし、費用やセキュリティの責任、運用体制の課題も残るため、システムごとに移行の要否と手法を見極め、段階的に進めることが欠かせません。計画的に進めれば、コストと運用負荷を抑えながら、場所を問わず業務を続けられる環境を整えられます。

DirectCloudは、ファイルサーバーと同じ操作感や移行支援サービス、NASとの併用、250種類以上の操作ログを備えた法人向けクラウドストレージです。ファイルデータのクラウド移行をお考えのご担当者様は、ぜひ導入をご検討ください。

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