【DX推進の教科書つくりました!】DXの意味と推進していく上でのポイント
IT技術の発展によって、日常の様々なシーンでデジタル化が進んでいます。
そんな中、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉を耳にする機会が増えたと感じている方も多いかと思います。
言葉の響きから、「なんとなくITやデジタル化に関すること」という認識はあるかもしれませんが、その意味を正確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。
デジタルトランスフォーメーションとは、IT技術を使って仕事や日常生活を改革するという考え方のことを指します。
近年では、このデジタルトランスフォーメーションなしに事業を継続していくのは難しくなるともいわれています。
今回は、デジタルトランスフォーメーションという言葉の意味と共に取り組むべき理由を述べた上で、具体的な取り組み方を解説します。
目次
- 1. DXの意味
- 2. DXが推進される背景と今取り組むべき理由
- 3. DXを推進していくにあたり取り組むべき内容
- 4. DXを推進していく上での課題と解決するための手順
- 5. 日本企業におけるDXの推進状況と成功事例
- 6. まとめ

情報システム・営業・総務担当者必見!
DXの意味
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良くさせる」という考え方のことです。
2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で、それから15年以上が経ち、彼が提唱した通りになっています。
例えば、キャッシュレス決済の普及で現金を持ち歩かない人が増えたり、IoTによって外から洗濯機やロボット掃除機を操作することができたり、IT技術の発展によって人々の生活は大きく変化しました。
デジタルトランスフォーメーションは「DX」と略されます。英語表記の「Digital Transformation」を単純に略すと「DT」となりますが、「Trans」は「X」で表すことが多いため、デジタルトランスフォーメーションは「DX」と略されるのが一般的です。
ビジネスの世界における解釈
デジタルトランスフォーメーションやDXという表現は、ビジネスの場でもよく使われます。
本来の言葉の意味はビジネスに限りませんが、ビジネスシーンで使われる場合は「企業がIT技術を活用して事業を改革する」という解釈をされることがほとんどです。
ビジネス用語としてのDXに明確な定義はありませんが、このように理解しておいて問題ありません。
日本におけるDX
日本でもデジタルトランスフォーメーションへの注目は高まっており、2018年12月に経済産業省が「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公開しました。
DXを推進する企業の経営層に向けて、「経営のあり方」と「ITシステムの構築」という2つの観点でまとめられており、DXを実現するために必要なアクションなどについても記載されています。
経済産業省はをDXを下記のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織・プロセス・企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
つまり、DXの目的は、企業が競争優位性を高め事業を継続させることにあります。
経済産業省がこのようなガイドラインを作成した背景に、日本企業のシステムを取り巻く問題があります。
2018年9月に経済産業省が公開した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』にて、既存システムが細分化して複雑になっていることやIT人材の不足などが原因となり、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしています。これが「2025年の崖」です。
日本企業でもデジタル化は進んでおり、2025年の崖と言われてもピンとこない人もいるかもしれません。
しかし、「デジタル化」と「デジタルトランスフォーメーション」は別物です(デジタル化とDXについての詳細は後述)。
2025年の崖という問題を解決するためには、経営層がDXの重要性を把握し、システム部門や現場サイドと連携しながら取り組みを進めていく必要があります。
デジタル化とDXの違い
DXとデジタル化は、似ているようですが全くの別物です。
デジタル化は業務にIT技術を取り入れることをいいます。例えば、紙の資料を廃止してデータで管理するようにしたり、人が手作業で行っていた単純作業をRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)で効率化したりすることをデジタル化といい、比較的小規模な範囲での変化を指します。
一方、DXは先述の通り「IT技術によって生活や仕事を改革する」という意味で使われる言葉です。
変換や変形という意味の「Transformation」という単語が表す通り、働き方や業務そのものを大きく変革することをいいます。
DXにおいてIT技術を取り入れることはあくまで手段であり、ビジネスにおけるDXの目的は会社規模の事業改革という大規模なものです。
「DXを実現するための手段のひとつがデジタル化」と捉えておくとよいでしょう。
DXが推進される背景と今取り組むべき理由
DXの意味を把握いただいたところで、ここではまずDXが求められる背景について解説します。
背景①:IT技術の進化
DXが推進される背景として、IT技術が日々進化しているという点が挙げられます。
ネットワーク通信の高速化やAIによるビッグデータの解析など、進化を続けるIT技術をビジネスに柔軟に取り入れられるかどうかは、企業の競争力に直結する時代になっています。
従来のやり方に固執していると競合他社や顧客の変化に取り残され、ビジネスチャンスの損失を招くことになりかねません。
常に変化していく環境に適応するため、事業モデルや組織運営といったレベルでの改革が求められているのです。
背景②:消費行動の変化
DXの推進が求められる理由は、これだけにはとどまりません。1つ目は消費行動の変化です。いわゆる「モノ消費からコト消費への移行」といわれるように、消費者の多くが商品やサービスを買うことそのものよりも、買うことで得られる体験をより重視するようになってきています。 そのため企業は、魅力的な体験や新しい価値観を与えられるような商品やサービスを提供しなければなりません。
背景③:進んだ法整備
日本でDXの導入が進められている背景には、デジタル化やDXを後押しするための法整備が進められていることも挙げられます。
紙での保存が義務付けられていた文書のデータ化を容認するe-文書法や、税に関する書類や帳簿のデータ化を容認する電子帳簿法、紙文書のスキャナ保存を容認したスキャナ保存制度など、様々な規制緩和が行われています。
また、Web上で申請が行える「IT導入補助金」や行政手続きにおける押印廃止の要請など、国が主体となる取り組みが進められている点も、企業のDX推進を後押ししています。
このように、IT技術の発展によって日々変化する市場に対応するため、企業は積極的にDXを取り入れるべき局面に入っています。
DXに取り組むべき理由は以下の通りです。
理由①:業務効率化や生産性の向上
IT技術を業務に適切に取り入れることで、生産性の向上が期待できます。
人が手作業で行っていた作業を自動化する、クラウドストレージを使って外出先からでも業務資料にアクセスできるようにするなど、まずは小規模なデジタル化から始めるだけで、現場は業務効率が上がったことを肌で感じられます。
DXによって働き方を大きく変えることで、コスト削減や人材確保につなげることも可能です。
例えば、テレワークを導入することでオフィスにかかるコストを削減したり、育児や介護で通勤が困難になる社員にも柔軟に対応できるメリットもあります。
従来では削減するのが難しかった固定費や、優秀な人材が家庭の事情でやむなく退職するのを引き留められないという事態を減らすことが可能になるのです。
理由②:柔軟なビジネス展開
高性能なスマートフォンや高速通信回線などの普及によって、消費者を取り巻く環境は大きく変化しています。
1人1台以上のデバイスを持っていることが当たり前の時代となり、あらゆる消費行動についての大量のデータが日々蓄積されています。
そのため、AIによるビッグデータの解析や、柔軟な開発が可能なシステム構成などを取り入れることは非常に重要です。
理由③:BCP(事業継続計画)の充実
地震や台風などの自然災害が多い日本において、BCP(事業継続計画)を充実させておくことは非常に重要です。
「オフィスにいなければ仕事ができない」という環境が当たり前では、災害などで出社が困難になるとたちまち業務がストップしてしまいます。
新型コロナウイルスの流行でテレワークが推奨されたときも、すぐに対応できた企業とそうでない企業では事業に与える影響に大きな差が出ました。
もちろん、業種によってDXを取り入れられる規模や影響範囲は異なるため、すぐに導入するのは難しいというケースも多いでしょう。
しかし、予想外の事態に備え、できるところからデジタル化を進めてDXを推進していくことは大切です。
理由④:ビジネスチャンスの喪失
DXを推進しないことでビジネスチャンスの喪失を招くという点も、デメリットです。
先述の通り、消費者を取り巻くIT環境は日々進化しています。そのため、環境に適応して柔軟にビジネス展開できる企業のほうが、そうでない企業よりも消費者に選ばれることは自然なことでしょう。
市場での競争力を維持するためにも、DXは不可欠な時代になっているといえます。
DXを推進していくにあたり取り組むべき内容
それでは具体的にDXを推進していくにあたって、何に取り組めばいいのでしょうか。ここでは代表的なものをご紹介します。
コミュニケーション手段をいくつか用意する
社内や社外とのコミュニケーション方法をいくつか用意しておくことは重要な課題です。
生産性向上のためには社員同士や社外の関係者と密接かつ質の高いコミュニケーションをとる必要があります。DXでチャット、音声、ビデオといった複数のコミュニケーション方法を用意し、デジタルによって記録やデータを管理しやすくすることが欠かせません。相手が希望するコミュニケーション方法に合わせるためにも、複数のやり方に対応できるようにしておくことは大切です。
進捗管理を可視化する
新型コロナでテレワークが広がるのに伴い、離れているメンバー同士が、双方の成果物や進捗状況を共有・管理する必要性が生じています。
DXを推進する際は、ツールやシステムを活用し、誰が何の仕事に取り組んでおり、その進捗がどのような状況なのかを可視化する工夫が必要です。そうすることで業務状況の管理が容易になります。
業務を効率化・自動化する
働き方改革を推進するためには、従来は人が行なっていた業務を、デジタル技術を活用することで効率化したり、自動化したりする取り組みも重要です。
RPAなどの普及で、従来は人が行なっていた作業を自動化する方法は増えつつあります。DX推進の際は、デジタル化が可能な業務を洗い出し、可能なものは積極的に効率化・自動化することが大切です。
マネジメントをデジタル化する
マネジメントにもツールやシステムを取り入れる必要があります。
例えば、リモート環境では社員の正確な勤務時間を把握することが難しくなるため、勤怠管理ツールなどを用いることで過労を防止するような対策が必要です。
また、マネージャーもテレワークで作業することに備えて、人事情報をデジタル化して一元管理する取り組みも課題になるでしょう。
情報管理・情報共有をデジタル化する
情報管理や情報共有をデジタル化することも重要な課題です。
DXを推進する場合、情報をオンラインで管理・共有する機会が増えるのは間違いありません。それに備えて、簡単かつスピーディに情報をやりとりできる仕組みを構築する必要があります。特に近年はクラウドストレージも普及しており、こういったサービスを利用することも効果的です。
セキュリティを確保する
デジタル化を推進する際は、セキュリティを確保する取り組みも欠かせません。
情報のデジタル化には便利さもある反面、サーバーが損壊したり、不正アクセスが発生したりすると情報の書き換え・消失・流出といったトラブルにつながるリスクがあります。DXでは効率を求めるだけでなく、安全への取り組みも不可欠です。
DXを推進していく上での課題と解決するための手順
DX推進が重要なのは確かです。しかしながら独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センターの「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」では、大企業・中堅企業の多くがDX推進について、未着手または部門単位での試行・実施に留まっていることが浮き彫りになっています。 それはなぜなのでしょうか。ここでは日本企業がDXを推進するうえで、直面している課題と解決するための手順について考えていきます。
まずは課題から見ていきましょう。
課題①:既存システムの肥大化・複雑化
多くの日本企業では、既存のITシステムがすでに導入から十数年経っており、老朽化することでいわゆる「レガシー化」しつつあります。また、過度なITシステムのカスタマイズ、既存システムの拡張をし続けた結果、システムそのものが肥大化・複雑化しているケースが多く見られます。既存システムの構築に関わっていた担当者が退職しているというケースもあります。
また、ベンダー企業にシステムの構築や運用を一任している企業が多く、こうした場合システムの全容について企業内で把握できる人材が限られます。それにより「ブラックボックス化」してしまい、刷新に支障をきたす恐れがあります。
既存のシステムが企業にとって最適化されているのは事実です。しかしながら既存システムをいつまでも使い続けられるわけではありません。属人化、過剰な最適化によって、近い将来維持そのものが困難になることが予測されます。
課題②:投資費用の不足
経済産業省の『DXレポート ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開』によれば、日本企業においてIT関連費用のおよそ80%が既存のシステムの維持・運営に割り当てられています。このように多くの日本企業では、既存システムの運用・維持の費用がかさみ、大きな負担となっています。
一方でDXを後押しするような、新たなデジタル技術やツールを導入するための戦略的投資がなかなか行われていないのが現状です。
課題③:IT人材の不足
DXを進めるうえで大切なのは、担い手となるIT人材の確保と教育です。
しかし多くの日本企業では、システムの運用・維持について、ベンダー企業に一任していることが多く、そもそも自社内ではIT人材が不足しています。一方でベンダー企業にとっても、働き手不足の影響でIT人材の不足は慢性的な課題となっています。
また、IT人材が確保できていたとしても、先程の費用面で起きている課題と同じように、既存のシステムの維持・運用のために多くの人材が割かれています。そのため戦略的な人材投資や教育ができていないケースが多いのです。
課題④:DXへの認識不足
DXは先程紹介したように、「ビジネスモデルや組織全体をアップデートすること」が求められています。そのため末端のツールを導入するような、これまでのIT化とは様相が異なります。
従来のあり方や方法に依存してしまうと、DXの効果を十分に発揮できない可能性があります。DXを効果的に推し進めるためには、経営的観点から今後の事業をどのように行うべきかといった視点に立ち、組織改編や企業風土の刷新といった大きな変革が求められます。
それではこれらの課題を解決するためには、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。
手順①:ビジョン・戦略を固める
まずは、経営トップを巻き込んだ上で、組織の理想の姿をイメージし、ビジョンを固めることが大切です。DXは単なる業務改善ではなく、組織構造や業務方法を抜本的に改革することもあります。そのためには裁量権の大きい経営層を引き入れ、社内でDXを推進するための戦略も立てる必要があるのです。
手順②:DXのための予算を確保
DXを進めるためには、当然ながら資金が必要です。
経営的な視点に立ち、既存システムの維持・保守のためだけでなく、DXを推し進めるための新たな予算を策定し、抜本的な対策を取ることが必要です。
手順③:体制を構築する
予算に基づき体制を構築します。DXの実現には大掛かりな作業を伴うため、基本的に社内SEや担当部長などが片手間に行なって成功するものではありません。 ITに知見がある人物や業務改革の推進力がある人物を選び、専属チームを構築する必要があります。 そのため、各部門でデータや技術を活用できる人材を育てていくことが大切です。データ利活用のスキルを持ち、事業を牽引できるデータサイエンティストなどを積極的に登用し、ビジネスの変革を起こしていくことが求められます。
手順④:現状分析をする
社内のIT資産を見直すための評価・分析を行って、技術的負債(過剰な運用・保守コストを生んでいるシステム)の低減を進めていきます。
DXでは、企業の保有するデータをリアルタイムに活用できることや、部門・企業を超えてデータの全体最適な活用ができることが求められるため、必要になるデータ基盤・ITシステム構築のための要件を整理します。
その後、競争力への影響が大きい部分と小さい部分を分け、社内リソースの割り振りやDX推進の優先順位を検討します。
また、システム刷新の際ブラックボックス化により移行作業に支障をきたさぬよう、普段からシステムを可視化しておくことで再びレガシー化するリスクを避けることも必要です。
手順⑤:システム・ツールを選定する
現状分析によって、特にデジタル化を進めるべき対象が絞り込まれたら、それに最適なシステムやツールを選定します。DXに取り組む際の動機も課題も会社によって異なり、どの会社にとってもベストとなる全てを網羅した完璧なものはありません。 例えば営業・マーケティング領域を強化したいならCRM/SFAツールが適していますが、ファイル共有を効率化・高セキュリティ化したいならクラウドストレージが最適です。あくまでも自社の課題に沿ったシステムやツールを検討するようにしましょう。
DXを進める上では正しい手順はもちろんのこと、下記のポイントも押さえておくことをおすすめします。
段階的なクラウド移行
クラウドサービスのメリットは、保守運用を外部に任せられるところです。
低コストで利用開始できるものも多く、自社システムからクラウドへの移行をサポートしてくれるサービスなどもあります。
また、クラウドサービスで不安視されがちなセキュリティに関しても、高度なセキュリティ対策が施されたサービスもあるため安心です。
いきなりすべてのシステムをクラウドに切り替えるのは不可能なケースも多いでしょう。
その場合は、まずはファイルサーバーをクラウドストレージに移行するなど、スモールスタートでも構いません。
クラウドストレージの導入だけでも、自宅や外出先からでも業務資料にアクセスできるようになるため、テレワークの推進や営業職の業務効率化などに十分な効果が期待できます。
開発などを行いたい場合はIaaSを活用
システムに独自のカスタマイズが必要な場合は、IaaSを利用するという方法もあります。
IaaSとはサーバーやネットワークなどのインフラ環境をクラウドで提供するサービスで、クラウド上の高性能のインフラを使って自社開発を行うことが可能です。
インフラの保守はサービス提供企業に任せられるため、自社で管理する手間や費用が減るという大きなメリットがあります。
クラウドで利用できるAI
DXや業務改革といったテーマには欠かせないAIも、クラウドサービスで提供されているものがあります。
音声認識や画像分析など、事前トレーニング済みのAIをクラウドで利用することができるのです。
AIによる会話技術を提供するチャットボットでは、従来は人と人とのやりとりが主流だった「接客」という仕事を機械がこなしています。
チャットボットの導入によって、コールセンターの業務効率化や離職率の低下を実現している例もあります。
手順⑥:業務のデジタル化を行う
DX推進の計画がまとまったら、いよいよ移行開始です。DXの実行段階では、機能の実装・システムの切り替えといった技術的な作業だけでなく、ツールを実際に使う一般社員への周知・教育も必要です。 混乱が起こらないように準備を万端にしておくのに加えて、問い合わせやトラブル対応の窓口も設置しておきましょう。
日本企業におけるDXの推進状況と成功事例
ここでは、日本企業におけるDXの取り組み状況をデータを元に確認しながら、DXに成功した企業の事例をご紹介します。
大企業中心に進むDX
2019年の日経BP社の調査では、DXを推進している企業が36.5%、全く推進していない企業が61.6%となっています。
また、DXの推進が行われている企業の割合は従業員300人未満の企業で21.8%、5000人以上の企業では80.3%で、企業規模による取り組み状況の差は明白な状況です。逆に見れば、中小企業にはDXの余地がある企業が多く残っていることになります。
具体的なアクションで足踏み
日本能率協会の「日本企業の経営課題 2020」によると、大企業の約半数が「既に取り組みを始めている」との結果になっている一方、中小企業では6割以上が検討段階であることが分かりました。
また、IPA(情報処理推進機構)の「DXの実現に向けた取り組み」では、「DXの実践で足踏みをしている企業が多い」という結果も出ており、中堅企業以上は確かにIT分析・評価が進んでいるものの、廃棄や競争・非競争領域ごとの対応といった具体的なアクションまで結びついていない事実が浮き彫りになっています。
課題は企業によってさまざま
DXの取り組みが足踏みとなる理由は、企業によってさまざまです。
例えば、「ITシステムのブラックボックス化」「予算がつかない」「経営判断が行われていない」「DXのための担当者やノウハウの不足」などを挙げることができます。
なかなかDXが進んでいないというのが現状ですが、そんな中でもDXに成功した企業も存在します。ここでは、幅広い業種から成功事例を3つ紹介します。
セゾン情報システムズ(情報通信業)
セゾン情報システムズでは、財務・経理業務の属人化による不透明さから脱却するためにツールを活用したDXを推進し、オープンで風通しのいい会社へ変革させました。
データ連携基盤に「DataSpider Servista」を採用し、経費精算システム・会計システム・財務リスク管理システム・デジタル決算・経理システムを連携させることで、業務量を3割削減させることに成功し、年間6400枚に相当する紙の削減に成功しました。
データを自動で連携させることで 単純業務量の削減・決算品質の向上・ミスの防止を実現し、紙を廃止することでオフィスへの出勤が必須となる働き方を変えた良い一例です。
小松製作所(製造業)
小松製作所(以下コマツ)では、労働者不足が深刻化する建設業の生産性改善のため、「スマートコントラクション」というサービスを展開しています。コマツでは以前から同社の建設機械すべてにGPSを搭載するなど、先進的な取り組みを行ってきました。スマートコントラクションは、測量、設計、施工計画、施工、検査といった建設の各工程を3Dデータでつなぎ、建設作業全体の最適化を目指しています。
コマツが提供するICT建設機械を通してデータの取得ができる他、測量データをもとに図面や計画表の作成、シミュレーションを行ったり、機器の操作ガイドを提供したりといった機能があり、作業効率化や安全性向上へ貢献することで多くの利用者を獲得しています。
新潟市教育委員会事務局施設課(教育・学習支援業)
新潟市教育委員会事務局施設課はクラウドストレージを活用して業務効率の向上に成功しました。同施設では市内177の学校施設の維持管理、整備、企画調査などを行っており、学校職員との情報共有が頻繁に行われていました。連絡時に写真、図面などをメールで送信していましたが、メールの添付容量の上限によって、ファイルの圧縮加工や分割送信などが必要となり、その作業に多くの工数を取られていました。
しかし、法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」を導入後、各種資料を共有フォルダに格納し、必要な際にダウンロードする運用にしたことで、これまでの煩わしさから解放されています。
また、DirectCloudの導入はセキュリティリスクの軽減にも有効でした。メールの送付回数が多いと誤送信の心配がありますが、送信数が減ったことに加え、ストレージ上のファイルなら7種類のアクセスレベル設定できるため安心です。ファイルプレビュー機能で外出先からの情報が確認できるなど利便性も大きく向上し、業務ストレスの軽減にも一役買っています。
まとめ
IT技術によって日常生活や業務を改革するという概念である、デジタルトランスフォーメーション(DX)は、日本企業においても非常に重要な考え方です。
IT技術の発展よって日々変化する市場に適応できるように、DXを推進することが急務です。
近年では様々なクラウドサービスが提供されており、自社に合ったサービスを選択して利用することができます。
日本には2025年の崖という問題もあるため、危機感を持って対応を進めましょう。

情報システム・営業・総務担当者必見!