BCP対策とは?5つの要素別の具体例と策定・対応の手順を解説

BCP対策とは?5つの要素別の具体例と策定・対応の手順を解説
BCP対策とは?5つの要素別の具体例と策定・対応の手順を解説

地震や豪雨、感染症、サイバー攻撃といった緊急事態は、前触れなく事業を止めることがあります。BCP対策の必要性は感じていても、何から決めればよいのか、計画をどう運用すればよいのかで迷う企業は少なくありません。

本記事では、BCPの意味から、ヒト・組織体制・モノ・カネ・情報の5つの要素別の具体例、策定の手順、発動時のBCP対応の流れ、形骸化させない運用までを解説していますので、自社の備えを見直す際に参考にしてください。

本記事のサマリ

  • BCP対策は、緊急事態でも中核事業を続け、止まっても早く戻すために平常時から備える取り組みである
  • 備えはヒト・組織体制・モノ・カネ・情報の5要素で考え、どれか1つが欠けても事業は再開できない
  • 基本方針から発動基準までの手順で策定し、教育・訓練と定期的な見直しを重ねて形骸化を防ぐ
  • DRサイトへの自動バックアップを備えたDirectCloudで、情報資産のBCP対策を自動化できる
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BCP対策とは?事業継続計画の意味と目的

BCP対策とは、大地震や大火災などの緊急事態に遭っても、中核事業(企業の存続にかかわる最も重要な事業)を続けたり早く再開したりできるよう、平常時から計画を立てて備える取り組みです。実務では「BCP」と「BCP対策」がほぼ同じ意味で使われ、「BCP対応」も同じ取り組みを指すケースが多く見られます。

BCPの定義と読み方

BCPはBusiness Continuity Planの略で「ビーシーピー」と読み、「事業継続計画」と訳されます。経済産業省中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」は、緊急事態でも事業資産の損害を最小限にとどめ、中核事業を継続・早期復旧させる方法や手段を平常時に決めておく計画と定義しています。その特徴は次の5つです。

  • ●優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
  • ●緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
  • ●緊急時に提供できるサービスの水準を顧客と事前に協議しておく
  • ●事業拠点や生産設備、仕入品調達などの代替策を用意しておく
  • ●すべての従業員と事業継続について意思疎通を図っておく

指標には、復旧の期限を示す目標復旧時間(RTO)と、戻すデータの時点を示す目標復旧時点(RPO)があり、策定手順と「情報」の対策で詳しく扱います。介護分野では「業務継続計画」と表記される場合もあります。

参照元:中小企業庁|1.1 BCP(事業継続計画)とは

BCP対策の目的

BCP対策の目的は、従業員と顧客の安全を守ったうえで中核事業の中断を防ぎ、中断しても目標とする時間内に復旧させることにあります。中小企業庁の指針も、BCPの基本方針の例に人命(従業員・顧客)の安全確保や顧客への供給責任を挙げています。

事業の停止が長引けば、顧客の流出や事業の縮小を招きかねません。同指針には、東日本大震災で復旧が遅れた結果、顧客が離れて従業員の解雇に追い込まれた中小企業の例が示されています。BCP対策は、取引先や地域からの信用を守る経営判断でもあるのです。

参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版

防災対策・BCMとの違い

防災対策とBCP対策は目的が異なります。防災対策は、避難計画の作成や建物の耐震化などで人命や建物・設備の被害を抑えるための備えです。BCP対策は、被災後に中核事業をどう続け、どう復旧させるかを決めておくものを指します。

両者は対立せず、中小企業庁の指針も施設の耐震化や棚の固定をBCPの事前対策に含めています。防災で被害を小さくしておくことが、BCPを機能させる前提になるわけです。BCM(事業継続マネジメント)は、BCPの策定とともに教育・訓練や計画の更新までを含む、平常時の管理活動全体を意味します。

参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版

BCP対策が企業に求められる理由とメリット

災害や事故で事業が止まったときの損失は、自社の売上にとどまらず、取引先との関係にまで及びます。一方で、国内企業のBCP策定は、企業の規模や業種によって進み方に差があるのが現状です。BCPに取り組むと、緊急時の対応力だけでなく平常時の経営にも良い影響が生まれます。

BCP対策が企業に求められる背景、内閣府の調査からわかる国内企業の策定状況、取り組むメリットについて、続く3つの見出しで解説します。

BCPの有無で分かれる被災後の明暗と、国内企業の策定率
図1:BCPの有無で分かれる被災後の明暗と、国内企業の策定率

BCP対策が求められる背景

事業の停止が長引くほど売上は落ち込み、顧客も離れ、事業の縮小や廃業に至るおそれがあります。中小企業庁の想定シナリオでは、地震で被災したプレス部品メーカーの明暗が分かれました。BCPのない企業は納品先へ連絡できず、1週間後に発注を他社へ移され、受注は戻りませんでした。

BCPのある企業は3日後に1か月での全面復旧を納品先へ伝え、予定どおり再開しています。仕入先が被災すれば自社も止まるように、サプライチェーン(調達から販売までの企業間のつながり)を通じて、自社のBCPは取引先の事業継続にも関わります。

参照元:中小企業庁|資料04 BCPの有無による緊急時対応シナリオ例

国内企業のBCP策定状況

内閣府(防災計画担当)が5,052社を対象に実施した「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」によると、BCPの策定率は大企業で75.8%、中堅企業で54.8%でした。前回調査と比べると、大企業はほぼ横ばいでしたが、中堅企業は45.5%から大きく伸びています。

業種別では、運輸業・郵便業、サービス業、不動産業・物品賃貸業の策定率が50%を下回っており、業種間の差も残ります。策定の「予定はない」「知らなかった」と答える企業の割合は調査のたびに減り、BCPへの意識は広がっています。

参照元:内閣府(防災計画担当)|令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(概要)(PDF)

BCP対策に取り組むメリット

BCP対策のメリットは、まず緊急時の判断の拠り所ができることです。優先する業務が決まっていれば、混乱の中でも迷わず動き出せます。非常時も供給を続ける体制を示せば、取引先や顧客からの信頼も高まります。守るべき中核事業と経営資源を洗い出すため、事業の優先順位も明確になります。

中小企業庁が紹介する新潟県中越地震(2004年)の事例では、長岡市の加工機械メーカーが初日に従業員の安否確認、協力企業の被害把握、顧客への連絡を終え、3日目に事業を再開しました。初動の段取りが決まっていれば、復旧は早まります。

参照元:中小企業庁|資料07 災害事例における企業の事業継続・復旧シナリオ

BCP対策で想定すべき主なリスク

BCPで想定するリスクは、自然災害に限りません。中小企業庁の指針も、火災や集団感染、電力供給の停止、コンピュータ犯罪などをリスクに挙げています。サイバー攻撃やシステム障害、取引先・インフラの途絶まで含めると、範囲は幅広くなります。

内閣府の令和7年度調査では、リスクを想定した経営を行う企業が大企業で約9割、中堅企業で約7割にのぼり、重視するリスクでは自然災害に関する項目の割合が増えました。リスクの種類ごとに、事業への主な影響と想定例を次の表にまとめています。

リスクの種類 事業への主な影響 想定例
自然災害 拠点や設備が損壊する、交通やライフラインの停止で従業員が出社できない 地震、台風・豪雨による浸水、大雪
感染症 従業員の欠勤が重なり、業務を回す人員が不足する 新型インフルエンザなどの感染症のまん延
サイバー攻撃・システム障害 業務システムやデータが使えなくなり、業務が止まる ランサムウェアによるデータの暗号化、サーバーの故障
取引先・インフラの途絶 原材料や部品の調達、物流が止まる 仕入先の被災、停電・通信障害

自社が優先して備えるリスクは、後述する策定の手順の中で、立地や業種に照らして絞り込みます。

参照元:内閣府(防災計画担当)|令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(概要)(PDF)

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BCP対策の具体例|5つの要素別に解説

BCP対策で備える内容は、ヒト・組織体制・モノ・カネ・情報の5つの要素に分けて考えると、抜け漏れを防げます。中小企業庁の指針も、中核事業の継続に必要な資源として人、物、金、情報を挙げ、被災時の確保方法を事前に検討するよう促しています。
5つの要素は互いに支え合っており、どれか1つが欠けると、ほかが無事でも事業は再開できません。
要素ごとに用意しておきたい主な対策を、自社の点検に使えるチェックリストの形で次の表にまとめました。各対策の考え方は、続く5つの見出しで説明します。

要素 点検したい主な対策
ヒト □ 従業員と来訪者の安全を確保する手順 □ 電話以外も含めた複数の安否確認手段と、最新の連絡先一覧 □ テレワーク環境と、少人数で中核業務を回す要員計画
組織体制 □ 統括責任者と代理責任者の指名 □ 権限を引き継ぐ代行の順位 □ 対策本部の設置場所と、集まれない場合の連絡手段
モノ □ 建物の耐震化と、棚・什器・サーバーの転倒防止 □ 本社や工場が使えない場合の代替拠点 □ 生産設備や調達先の代替手段
カネ □ 事業停止中の固定費をまかなう手元資金と融資枠 □ 休業中の固定費まで含めた損害保険の補償範囲 □ 災害復旧貸付など公的な融資制度の把握
情報 □ 中核事業の継続に欠かせないデータの洗い出し □ RPOに沿ったバックアップの頻度と方式 □ 遠隔地への保管と、復元できる世代の確保

「情報」の行で不足が見つかった場合は、遠隔地へのバックアップの仕組みをまとめたサービス説明書も点検の参考にしてください。

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ヒト:従業員の安全と業務要員を確保する

最優先すべきは、従業員と来訪者の命と安全を守ることです。BCPの基本方針の例でも、中小企業庁の指針は人命(従業員・顧客)の安全確保を最初に挙げています。安否確認は電話が通じない事態を想定し、災害用伝言ダイヤル「171」やメールなど複数の手段を用意しておきます。

従業員の連絡先一覧も、平常時から最新の状態に保つ必要があります。交通機関の停止で出社できない場合に備え、自宅から業務を続けられるテレワーク環境や、少人数で中核業務を回す要員計画も欠かせません。

組織体制:指揮命令系統と代行者を決める

緊急時に誰が判断し、誰に指示を出すのかが決まっていないと、初動が遅れます。中小企業庁の指針は、全社の意思決定と指揮命令を担う統括責任者を定め、不在や被災に備えて代理責任者も2名決めておくよう示しています。

代行の順位を決めておけば、社長が出張中でも総務部長、情報システム部長の順に権限を引き継げます。対策本部を置く場所は、本社が使えない場合の候補も用意しておきます。集まれないときに備え、災害用伝言板やメールなど電話以外の連絡手段も決めておきましょう。

モノ:施設・設備の被害を抑え代替手段を持つ

施設や設備の対策は、被害そのものを小さくすることから始めます。建物の耐震化や、棚・什器・サーバーの転倒防止がその代表例です。固定していない設備や什器が地震で移動・転倒する被害は、中小企業庁の指針でも想定されています。

そのうえで、本社や工場が使えなくなった場合の代替拠点、生産設備や調達先の代替手段を決めておきます。東日本大震災では、本社2階のサーバーが無事だったのに、停電でしばらく動かせなかった宮城県の運送業者がありました。社内に置いたサーバーは、建物と一緒に止まるおそれがあるのです。

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カネ:事業停止中の資金繰りに備える

事業が止まっても、従業員の給与や事務所の賃借料といった固定費は発生し続けます。売上が途絶えた期間をしのげるよう、手元資金や金融機関からの融資枠を平常時から確保しておきましょう。加入している損害保険が、建物や設備の損害だけでなく休業中の固定費まで補償するかも確認が必要です。

内閣府の令和7年度調査では、建物・設備一式に損害保険・共済をかけている企業は大企業で約6割、中堅企業で約4割にとどまりました。被災企業向けの災害復旧貸付など、公的な融資制度も把握しておくと安心です。

参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版、内閣府(防災計画担当)|令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(概要)(PDF)

情報:業務データとシステムを守る

業務データが失われると、施設や人員が無事でも事業は再開できません。受注データや請求データを失えば、取引先への納品も請求も止まります。ところが情報の対策は、専門知識が必要なことから情報システム部門任せになりやすい面があります。経営層が経営課題として受け止め、全社で優先度を決める必要があります。

まずは顧客情報や図面、契約書、会計データなど、中核事業の継続に欠かせないデータを洗い出しましょう。具体的な対策を、守るデータと頻度の決め方、保管場所の分散と被災時の取り出し方、復元できる世代の確保の3つの観点から説明します。

RPOから守るべきデータと頻度を決める

冒頭で触れたRPO(目標復旧時点)は、どの時点のデータまで戻せれば業務を再開できるかを示す指標です。いつまでに復旧させるかを示すRTO(目標復旧時間)と組み合わせて決めます。RPOが決まると、バックアップの頻度と方式も定まります。

たとえば、毎日更新する受発注データで「前日の終業時点まで戻せれば再開できる」なら、RPOは24時間とし、日次でバックアップを取ります。更新の少ない社内規程や図面であれば、週次で足りる場合もあります。重要度ごとにRPOを分ければ、全データを高頻度で守る負担も抑えられます。

RPOとRTOの関係
図2:RPOとRTOの関係(被災した時点を境に前後を決める)
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バックアップの保管場所を遠隔地に分散する

バックアップを元のデータと同じ建物や同じ地域に置くと、広域災害で両方を同時に失うおそれがあります。中核事業に必要な情報の複製は、同じ災害で被災しない場所に保存するよう、中小企業庁の指針も求めています。主な保管方法ごとに、広域災害が起きたときの扱いと運用上の確認点を次の表にまとめました。

保管方法 広域災害が起きたときの扱い 運用上の確認点
社内のNAS・外付けディスク(同一拠点) 元データと同じ建物にあるため、建物の被災で同時に失われるおそれがある 拠点の外に複製を持つ仕組みを別途用意する
テープ・ディスクの外部保管 離れた場所に保管すれば、元データとの同時被災を避けやすい 搬送と保管の手間があり、取り出して戻すまでに時間がかかる
クラウドストレージ 事業者のデータセンターに保管され、インターネット経由で取り出せる データセンターの所在地と冗長化の構成を確認する
遠隔地のDRサイトへの複製 主たる保管場所とは別の地域に複製を持てる 複製の頻度(RPO)と、DRサイトで行える操作を確認する

保管方法を選ぶ際は、被災時に代替拠点や自宅からデータを取り出せるかも判断材料になります。保管先へ出向かなければ取り出せない方法では、交通機関が止まった状況で業務の再開が遅れかねません。

サイバー攻撃に備えて復元できる世代を残す

ランサムウェア(データを暗号化して使えなくする不正プログラム)への感染や誤操作は、気づくまでに時間がかかる場合があります。最新のバックアップ1つだけでは、すでに被害を受けたデータで上書きされている可能性があります。複数の時点のデータを世代として残しておけば、被害前の状態に戻しやすくなります。

バックアップしたデータを実際に取り出す訓練や、代替システムの起動を試す訓練は、中小企業庁の指針でも挙げられています。復元の手順を試し、目標復旧時間内に戻せるかを確かめておきましょう。

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BCPを策定する5つの手順

BCPの策定は、中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」に沿って進めると、何から手をつけるかで迷わずに済みます。同指針は、企業が投入できる時間や労力に応じて、入門・基本・中級・上級の4つのコースを用意しています。

入門コースは経営者1人が1〜2時間程度で必要最低限のBCPを作れる内容のため、初めて取り組む企業でも始めやすい構成です。同指針の流れをもとに、策定の進め方を5つの手順に分けて説明します。

BCPを策定する5つの手順
図3:BCPを策定する5つの手順

参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版(PDF)

基本方針を立て推進体制と担当を決める

最初に、何のためにBCPを策定するのかを経営者が基本方針として示します。従業員の安全を守る、顧客への供給責任を果たすといった方針が、以後の判断の拠り所になります。中小企業庁の指針はBCPの策定・運用を最重要の経営課題と位置づけ、経営者が率先して取り組むよう求めています。

役割分担が決まっている企業では、総務や事業部門、情報システム部門などから担当者を集めて推進体制をつくりましょう。緊急時の成否は従業員の行動に左右されるため、BCPは特定の部署に任せきりにせず、全社で役割を分担して進めます。

中核事業と目標復旧時間を決める

次に、優先して継続・復旧させる中核事業を選びます。災害時は人員も設備も限られるため、どの商品やサービスを優先するかを事前に決めておく必要があります。候補となる事業を挙げ、売上などの財務面、取引先との関係、社会的な要請の3つの面から優先順位をつけていきます。

中核事業が決まったら、いつまでに復旧させるかという目標復旧時間(RTO)を設定しましょう。決め方について中小企業庁の指針は、取引先と事前に調整するか、収入が途絶えても自社が耐えられる期間をもとにするよう示しています。

リスクを洗い出し被害を想定する

リスクの種類と影響は先に挙げた表のとおりで、この手順では自社が優先して備えるリスクを絞り込みます。地震は日本のどこでも起こりうる一方、浸水や土砂災害の危険は地域によって大きく異なります。ハザードマップ(浸水などの危険区域を示した地図)で拠点の立地を確かめ、売上が気候に左右されやすいかといった業種の特性も踏まえましょう。

絞り込んだリスクが起きたとき、中核事業に必要な人・設備・資金・情報のうち何が使えなくなるかを見極めます。指針では、事業の継続を妨げるこうした資源をボトルネック資源と呼んでいます。
中核事業とボトルネック資源は、業種によって変わります。中小企業庁の指針が紹介する業種別の記入例や被災企業の事例などをもとに、代表的な例を次の表にまとめました。

業種 中核事業の例 ボトルネックになりやすい資源の例
製造業 取引先向けの、代替生産がきかない製品の製造 金型や生産設備、原材料の仕入先
卸売・小売業 地域への生活物資や食料品の供給 店舗と商品棚、生鮮品を保つ電力、物流
運送業 取引先から預かった商品の配送 ドライバー、車両の燃料、請求や給与を処理する業務システム
飲食・宿泊業 宿泊施設や食事の提供 厨房や空調などの設備、従業員との連絡手段
情報通信業 顧客企業のシステムの運用・保守 サーバーなどの機器と、そこに保存した業務データ

事前対策と代替手段を決める

ボトルネック資源が見えたら、災害の影響から守る対策と、使えなくなった場合の代替手段の両方を決めます。建物を耐震化して設備を守りつつ、被災に備えて代わりの作業場所も確保しておく、といった形で組み合わせます。

ただし、すべてを一度に実施するのは費用面から困難です。費用の少ないソフト面の対策から始め、設備投資を伴う対策は数年をかけて順に進める考え方を、中小企業庁の指針はとっています。中核事業への影響が大きいものから優先順位をつけ、5つの要素別に挙げた対策から自社に必要なものを選んでいきましょう。

発動基準を定め計画書にまとめる

計画を確実に動かすには、どのような事態でBCPを発動するかという発動基準が欠かせません。中小企業庁の指針は、中核事業に甚大な影響を与えうる災害とその規模をもとに基準を定めるとしています。「本社所在地で震度6弱以上」のように具体的に決めておくと、判断に迷いません。

発動を判断する人と、その人が不在のときの代理も決め、平常時から従業員に周知しておきます。ここまでの検討結果は、従業員や取引先の連絡先一覧、代替手段の一覧とともに計画書にまとめ、全従業員と共有しましょう。

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BCP対応の流れ|発動時の3段階

緊急事態が起きると、BCP対応は時間の経過に沿って、初動対応、事業継続対応、復旧対応の3段階で進みます。

中小企業庁の指針も、発生当日の初動対応から、数日のうちに中核事業の継続方針を立て、数か月をかけて復旧を進める流れを示しています。各段階で誰が何をするかを、あらかじめ計画書に落とし込んでおけば、混乱した状況の中でも判断はぶれません。

BCP発動時に時間の経過に沿って進む3段階
図4:BCP発動時に時間の経過に沿って進む3段階

初動対応:人命を守り被害状況を把握する

発生直後は、従業員や来訪者の避難と安全確保を最優先に動きます。火災や浸水の危険があれば建物の外へ退避させ、負傷者の応急手当を行ったうえで、従業員とその家族の安否を確認しましょう。続いて、建物や設備、パソコンや業務システムの被害状況を、立ち入りが安全になってから確かめます。

集まった情報をもとに対策本部を立ち上げ、発動基準に照らしてBCPを発動するかを判断します。サイバー攻撃の場合は、感染した端末をネットワークから切り離し、被害の拡大を止める対応も加わります。

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事業継続対応:代替手段で中核業務を再開する

初動対応が済んだら、経営者の指揮のもとで中核業務の再開に向けて動きます。まず顧客や取引先に、被災状況、今後の納品の目処、確実な連絡手段、次回の連絡時期を伝えます。被害の大きさを踏まえて目標復旧時間を見直し、中核事業の継続方針を決めましょう。

中小企業庁の指針は、現在の拠点の復旧、代替場所への設備の移動、他社への一時的な生産移管という方針の選択肢を挙げています。代替拠点やテレワーク、バックアップデータなど事前に用意した手段を使い、中核業務を再開します。

復旧対応:平常時の業務体制へ段階的に戻す

中核業務が再開できたら、後回しにしていた業務や本来の拠点・設備を段階的に復旧させます。建物や生産設備の修理を進め、他社に一時移管していた生産は、自社の設備が直った時点で引き上げて元の取引に戻します。

代替生産は一時的なもので、復旧後は発注を戻すという原則を、あらかじめ取引先と確認しておくと戻しやすくなります。事態が収束したら対応を振り返り、連絡が滞った点や想定より時間がかかった点をBCPの見直しに反映しましょう。

参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版(PDF)

BCPを形骸化させない運用と見直し

BCPは策定して終わりではありません。人事異動や取引先の変化によって中身は古くなり、訓練をしなければ計画どおりに動くことも難しくなります。BCPの運用は企業が存続する限り続く活動だと、中小企業庁の指針も位置づけています。

教育・訓練と見直しを繰り返して実効性を保つこの継続的な取り組みが、冒頭で触れたBCM(事業継続マネジメント)にあたります。形骸化を防ぐための教育・訓練、定期的な見直し、取引先とのすり合わせの3点を、続く見出しで解説します。

BCPを形骸化させない3つの取り組み
図5:BCPを形骸化させない3つの取り組み

教育・訓練で計画の実効性を確かめる

BCPを機能させるには、従業員一人ひとりが計画の内容と自分の役割を把握している必要があります。社内での勉強会や意見交換、応急救護の講習の受講などを通じて、教育を定期的に行いましょう。そのうえで、計画どおりに動けるかを訓練で確かめます。

机上訓練(会議室などで実際の状況を想定して意思決定をする訓練)や連絡網による安否確認の訓練、先に触れたバックアップデータの取り出し訓練など、手順の一部を切り出した訓練から始める方法が、中小企業庁の指針に示されています。訓練で見つかった不備は、計画の改善に生かします。

定期的に見直して改善を続ける

計画の中身は、事業環境の変化とともに古くなります。中小企業庁の指針は、組織体制の大きな変更、取引先や中核事業の変更、主要な情報通信システムの大幅な変更、従業員の連絡先の変更などを、BCPを更新すべき場面の例に挙げています。

拠点を移転したり、ファイルサーバーをクラウドへ移行したりした場合も、連絡先や代替手段が実態とずれていないかを確かめましょう。大きな変化がなくても、指針は1年ごとの見直しが望ましいとしています。毎年4月など点検の時期をあらかじめ決め、訓練で見つかった課題もあわせて反映します。

取引先とBCPの内容をすり合わせる

先に触れたとおり、自社が無事でも、仕入先や委託先が被災すれば事業は止まります。主要な取引先がBCPを策定しているか、被災時にどこまで供給できるかを確かめておきましょう。

内閣府の令和7年度調査では、サプライチェーン対策に取り組む企業は大企業で約5割、中堅企業で約2割にとどまり、具体策では仕入先の複数化や仕入先への確認が上位です。

主要な顧客とは、目標復旧時間や緊急時に提供できるサービスの水準を事前に協議しておきます。取引先との意見交換やすり合わせを重ねることは、中小企業庁の指針にも記されています。

参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版(PDF)、内閣府(防災計画担当)|令和7年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(概要)(PDF)

DirectCloudで実現する情報資産のBCP対策

先に挙げた「情報」の対策で扱った、定期的なバックアップ、保管場所の分散、復元できる世代の確保、被災時のデータへのアクセスという4つの課題は、法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」と、オプションの「災害対策・遠隔地バックアップ」で解決できます。いずれも、情報システム部門の担当者だけに負担を寄せずに続けられる仕組みです。

本文で扱った課題 DirectCloudの機能 得られる効果
RPOに沿って定期的にバックアップを取る DRサイトへの毎日の自動バックアップ 担当者の手作業に頼らずバックアップを続けられる
保管場所を遠隔地に分散する 国内3拠点での分散稼働と、大阪・シンガポールから選べるDRサイト 広域災害でもデータ消失のリスクを抑えられる
復元できる世代を残す ファイルのバージョン管理 誤操作や感染の前の状態に戻しやすくなる
被災時もデータにアクセスする インターネット経由の利用と、DRサイトからのダウンロード 代替拠点や自宅から業務データを使える
災害対策・遠隔地バックアップで万が一の災害・トラブルに備える!

災害対策・遠隔地バックアップの詳細はこちら

遠隔地のDRサイトへ毎日自動でバックアップできる

災害対策・遠隔地バックアップをご利用いただくと、DirectCloud上のデータが毎日午前4時〜6時の間に自動でDRサイト(災害時の復旧用に別地域へ設ける拠点)へバックアップされます。DRサイトは国内の大阪リージョンか、自然災害リスクの低いシンガポールリージョンからお選びいただけます。

サービス仕様では、可用性(止まらずに使い続けられる度合い)は99.99%相当、RPO/RTOは24時間以内です。首都圏の広い範囲で地震や津波などの災害が起きても、データ消失を回避できる設計としています。

バージョン管理でファイルを以前の状態に戻せる

DirectCloudはファイルのバージョン管理に対応しており、上書きや誤った編集をしても、以前の状態に戻せます。先に触れたとおり、感染や誤操作に気づくまで時間がかかった場合でも、被害前の版から復元しやすくなります。

サービス側でも、データベースについて30世代のバックアップを複数拠点で保管し、予期せぬ事故の際に短時間で修復できる体制を整えています。暗号化の検知や自動復元まで求める場合は、ランサムウェア対策サービス「WhiteDefender」との組み合わせもご検討いただけます。

参照元:DirectCloud|法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」の特徴|堅牢なデータ管理

被災時も場所を問わずデータにアクセスできる

DirectCloudはインターネット経由で利用するため、出社できない状況でも、代替拠点や自宅から業務データを使えます。遠隔地バックアップを導入していれば、広域で停電が起きても、いずれかのリージョンにアクセスし、DRサイトからファイルをダウンロードして業務を早期に再開できます。

社外から使う場合は、不正な接続への備えも欠かせません。DirectCloudでは、企業が許可した端末だけに接続を認めるデバイス認証や、指定外の場所からのアクセスを遮断するIPアドレス制限を標準でご利用いただけます。

参照元:DirectCloud|デバイス認証、IPアドレス制限などの高度なセキュリティ

DirectCloudでBCP対策を強化した事例

ここからは、ファイルサーバーの損壊やデータ消失への備えを課題としてDirectCloudを導入いただいた企業の事例を、物流業、建設業、情報通信業から1社ずつご紹介します。いずれも、自社でサーバーを抱えることによる災害時や機器故障時のリスクと、バックアップ運用の負担を見直したケースです。

老朽化したサーバーから脱却し遠隔地バックアップを整備

電子部品を主に扱う総合物流企業の株式会社アルプス物流様では、約7年使ったオンプレミス(自社内に設置する形態)のファイルサーバーが老朽化していました。容量の拡充のたびに工数や投資コストがかかる点も懸念材料でした。

DirectCloudへの完全移行でファイルサーバーから脱却し、容量を柔軟に拡充できる体制を整えています。災害対策・遠隔地バックアップ機能も活用し、バックアップの取得を自動化しました。拠点が国内外に多く、どこが被災するか予見しにくい同社にとって、BCP対策の自動化は重要な決め手でした。

サーバー損壊への不安を解消しバックアップ工数も削減

ダムや空港などの大規模な土木工事を手がける山﨑建設株式会社様では、ファイルサーバーの運用リスクを洗い出した際、拠点のサーバーに外部からアクセスできなくなると業務が滞るリスクが浮かび上がりました。物理的なサーバーが損壊した場合への備えとともに、バックアップの取得やハードディスクの交換にかかる工数も負担になっていました。

DirectCloudへデータを統合したことでサーバーの破損リスクが下がり、BCP上のリスクを解消しています。バックアップやハードディスクの管理工数も削減できました。

機器故障によるデータ消失リスクを抑え追跡性も確保

総合化学メーカーの情報システム部門が独立した東ソー情報システム株式会社様では、社外とのやり取り用のアプライアンスサーバー(特定の用途に絞った専用機)が、ビルの停電で故障して再起動できなくなったことがありました。

データ消失のリスクを常に抱えていたうえ、操作ログも残らず、有事の追跡性にも課題がありました。DirectCloudの導入後は、ファイルを3拠点に分散保存する高い可用性により、データ消失のリスクが大幅に低減しています。250種類以上の操作ログで、インシデント発生時の追跡性も確保できました。

BCP対策に関するよくある質問

BCP対策を検討する経営者や担当者からよく挙がる疑問は、法律上の義務の有無、使える支援制度、ひな形の入手先、かかる費用の4つです。

いずれも、策定に着手するかどうかや進め方を判断するうえで、先に押さえておきたい論点になります。それぞれの質問に、公的機関の公表資料をもとに回答します。

  • BCP対策は法律で義務化されていますか?

  • 一般の企業では、BCPの策定が法律で一律に義務づけられているわけではありません。内閣府は「事業継続ガイドライン」を公表し、ガイドラインに沿ったBCPの策定を企業に促しています。一方、介護サービス事業者は、令和3年度の介護報酬改定でBCPの策定や研修・訓練の実施が義務化されました。

    令和6年3月31日に経過措置期間が終わり、感染症と災害のいずれか、または両方のBCPが未策定の場合は基本報酬が減算されます。障害福祉サービス事業者も同じく令和6年度からBCPの策定が義務化され、同年度の報酬改定で未策定の場合の減算が新設されました。所管官庁が業種独自の指針を示している場合もあるため、自社の業界の指針も確認しておきましょう。

    参照元:大阪府|介護施設・事業所におけるBCP(業務継続計画)の策定等について
    参照元:島根県|業務継続計画未策定減算の取扱いについて
  • BCP対策に使える補助金や支援制度はありますか?

  • 中小企業であれば、「事業継続力強化計画」の認定制度を活用できます。中小企業が策定した防災・減災の事前対策に関する計画を、経済産業大臣が認定する制度です。認定を受けると、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援を受けられます。

    同計画は中小企業が取り組みやすい簡易版のBCPと位置づけられており、本格的なBCPに向けた第一歩としても役立ちます。自治体が独自にBCP関連の支援を行っている場合もあるため、所在地の都道府県や市区町村の制度もあわせて確かめましょう。

    参照元:中小企業庁|事業継続力強化計画
  • BCPのひな形やマニュアルはどこで入手できますか?

  • 中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」では、先に触れた入門コース向けの記入シートをはじめ、BCPの様式類が公開されています。介護サービス事業者向けには、厚生労働省が業務継続ガイドラインやひな形をホームページに掲載しています。ただし、ひな形はあくまで書き方の参考です。

    同指針も、標準的なマニュアルどおりに作ればよいのではなく、各社の実態に合わせて工夫する必要があるとしています。そのまま埋めて終わりにせず、自社の中核事業や拠点の実情に合わせて内容を書き換えましょう。

    参照元:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針 第2版(PDF)
  • BCP対策にはどのくらい費用がかかりますか?

  • BCP対策の費用は、対策の内容や企業の規模によって大きく異なり、一律の相場はありません。推進体制づくりや連絡網の整備、マニュアルの作成といったソフト面の対策は、少ない費用から始められます。

    建物の耐震化や設備の導入などハード面の対策は多額の資金が必要になりやすいため、先に触れたとおり、数年をかけて順に進めると負担を抑えられます。

    必要な投資額は、目標復旧時間をどこまで短くするかによっても変わります。まず目標を決め、達成に必要な対策を選んでから費用を見積もりましょう。

まとめ

BCP対策は、緊急事態でも中核事業を止めず、止まっても早く元に戻すための経営の備えです。自然災害に限らず感染症やサイバー攻撃も事業を止めうる今、復旧の遅れは顧客の流出を招き、取引先の事業にも影響します。ヒト・組織体制・モノ・カネ・情報の5つの要素で備えを点検し、策定した計画を訓練と見直しで磨き続ければ、混乱の中でも迷わず動ける体制を築けます。

DirectCloudは、遠隔地のDRサイトへ毎日自動でバックアップするオプションや、ファイルのバージョン管理を備えた法人向けクラウドストレージです。被災時も場所を問わず業務データを使え、早期の業務再開を支えます。情報資産のBCP対策を強化したいご担当者様は、ぜひ導入をご検討ください。

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