ファイルには、営業資料・カタログデータのように数ヶ月で新しいものに入れ替わるもの、それとは反対にIT監査などの目的で長期間の保存が会社法で義務付けされているファイルがあり、目的に応じた保存期間が決まっている場合があります。
また、ファイルを保存するストレージも、ファイルの利用目的に応じて特徴が変わります。
ファイルを転送するストレージは、UIがシンプルで動作が軽快なものを求められますが、ファイルをアーカイブするためのストレージは、長期間の保存が目的とされることから大規模な容量・強固なセキュリティ要件など様々な機能が求められます。
特に、情報漏えい対策をはじめとする機密性、保存するストレージの可用性、ファイルの完全性などの「セキュリティの3要素」を筆頭に、長期保存時のコストなども考慮する必要があります。
そこでこのコラムでは、コストを抑えつつファイル保存をする階層型ストレージでのファイル運用、その際に認識しておく必要のあるファイルのアーカイブとバックアップの違いを説明した後に、ファイルアーカイブに求められるストレージについて詳しく解説していきます。
1. ファイルサーバー・NASで増え続けるファイルの適切な管理方法とは
企業では常にファイルが生み出されており、日々ファイルを活用している現場担当者やストレージの管理を行っている情報システム部は、ファイル保存の運用について悩みは尽きないのではないでしょうか。
ファイルの保存量が増加していけば、ファイルサーバー・NASのバックアップを取得する工数もかかります。
このため、単にファイルを保存しておくのみでなく、保存のルールを策定して適切に運用することが重要です。
現場のパフォーマンスを下げることなくコストバランスに優れる運用
日頃から業務で利用しているファイルサーバーのストレージ容量が逼迫すると、ファイル数が多すぎて現場の従業員も必要なファイルをすぐに探し出せないなど、業務パフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
ストレージを有効活用するためには、階層化したストレージを使うことが重要です。
そして、ストレージの階層化運用を実施するためには、事前にファイル保存の運用を定める必要があります。
ファイル保存運用ルールの決め方
前述のように、日常的に利用するストレージに、すべてのファイルを保存するのは費用対効果が低く、必要なファイルをすぐに探し出せないなど業務効率が低迷します。
このような課題を解決するために、ストレージを階層化する方法がありますが、階層型ストレージを適切に運用するためには、ファイルの利用頻度に応じた保存ルールを策定する必要があります。
具体的な運用方法の例としては、頻繁に利用するファイルのみメインで使用している1次ストレージ(ホットストレージ)に保存し、1年以上使われていないなど利用頻度が低いファイルについては、アーカイブ用として用意した2次ストレージ(コールドストレージ)へ移動して保存・管理する運用方法があります。
これにより、ホットストレージ領域への集中保存を回避しつつ、メインストレージの逼迫を防ぐことが可能になります。
コールドストレージで保管すべきデータの種類
基本的に長期間利用の無いファイルは保存するか削除することになりますが、再利用の可能性があるものを削除した場合、仮に当該ファイルが必要になった際には1から作成する作業が発生するため、余分な工数がかかってしまいます。
特に、プロモーションを行う部署では画像データ、動画データなどの制作期間がかかる大容量データをストレージに保存することが多いと思います。
こうしたクリエイティブに関するデータは、利用頻度は低いものの、削除した場合の損失が大きいため、ファイルを長期保存に適したストレージへ移行させて管理することが望ましい対応と言えます。
2. 利用頻度の低いファイルは長期保存を目的としたストレージにアーカイブ
長期間利用が無いものの削除ができないファイルは、長期保存を目的としたコールドストレージ領域へアーカイブすることで、ストレージの最適化を実現できます。
ファイルアーカイブとは?
ファイルのアーカイブとは、ファイルの長期保存を目的とした低コストなストレージへファイルを移動して、管理することを指します。
対象ファイルはホットストレージ領域からそのままの状態で移動させるため、元に戻した場合もそのままの状態で再活用することができます(真正性がある)。
アーカイブ対象のファイルは、使用頻度が低いが削除した場合の損失が大きいもの、法的な保存義務があるものなどの特徴があります。
また、ストレージによってはデータ改ざんをしていない事を証明するため、ファイルの上書きができないものもあります(Write Once Read Many(WORM)を満たすメディアでの保存がJIS Z6019で推奨されています)。
ファイルアーカイブを行うメリット
低コストなコールドストレージ領域へファイルのアーカイブをすることで、ホットストレージ領域のストレージ使用容量を抑える事となり、ホットストレージ領域単体で運用する状態よりも、ストレージコストの上昇を抑えることができます。
また、アーカイブ用のストレージにファイルを移動することで、ホットストレージ領域のファイル数が減少し、これによりバックアップ時の作業時間短縮に繋がり、ストレージ管理者の工数負担も削減します。
アーカイブとバックアップの違い
ファイルアーカイブとよく混同されがちな概念にバックアップがあります。
ファイルアーカイブは、ファイル原本を移動して長期間保存する事が目的であるのに対し、バックアップはシステム障害・データ破損・消失が発生したときに備えてファイルなどのコピーを保存し、瞬時に復元することを目的としているという違いがあります。
バックアップは、環境復元が目的であることから対象はファイルだけではなく、アプリケーション、オペレーティングシステムなどの環境も含まれます。
具体的には、ストレージ容量逼迫防止や必要なファイルをすぐに探し出せるようにすることがアーカイブの目的であり、障害・災害などの被害を被っても事業を継続可能な状態を目指すことがバックアップの目的となります。
3. ファイルアーカイブに適したストレージの要件
ファイルアーカイブ用ストレージには、情報セキュリティの三要素(機密性・可用性・完全性)などを満たしている事が求められます。
また、長期間削除することなく保存し続けることが重要なため、大容量でありつつ、リーズナブルなコストで利用できることが重要です。
オフラインアーカイブの特徴
ファイルのアーカイブ方法には、大きく分けて「オフラインアーカイブ」と「オンラインアーカイブ」があります。
ここでは、まずオフラインアーカイブについて解説します。
オフラインアーカイブは、LTOのような大容量のアーカイブ用ストレージにファイルを移動させて長期間保存することに適しています。
また、メインのストレージだけでなく、ネットワークからも切り離されているため、ランサムウェアに代表されるマルウェア感染リスクが低いというメリットがあります。
ただし、オフラインアーカイブ用ストレージで使用するLTOのような磁気テープの場合、正副2本のメディアへの記録と、テープ寿命(約30年)に関わらず、10年を目安にテープメディアの交換が推奨されており、多少の工数負担がかかってきます。
オンラインアーカイブの特徴
近年は、アーカイブ用の2次ストレージにクラウドストレージが選ばれることが多くなってきています。
オンラインアーカイブのメリットは、アクセス速度的に有利で、アーカイブされたファイルの再利用時にすぐホットストレージ領域へ移動させることが可能です。
そして、オフラインアーカイブのようなメディアの老朽化に対応するための定期的な交換作業はクラウドストレージでは行う必要がない(サービス提供事業者が対応)という強みもあります。
ただし、ストレージの階層化に対応していること、低コストなストレージ領域があること、セキュリティの三要素すべてを満たしていることが求められるため、導入可能な選択肢が限られてしまいます。
4. アーカイブ用ストレージ要件を満たす法人向けクラウドストレージ
ファイルのアーカイブに求められるセキュリティとストレージの階層化を実現した法人向けクラウドストレージを活用することで、システム管理者の負担を軽減しつつ、現場担当者の生産性を向上することができます。
アーカイブ用ストレージの厳しい要件を満たす法人向けクラウドストレージの一つに弊社が提供する法人向けクラウドストレージ「DirectCloud」があります。
DirectCloudでは、ウォームストレージを活用した長期間の保存への対応、ランサムウェアをはじめとする万全のマルウェア対策、国内データセンター3拠点分散保存による高い可用性を実現しています。
また、電子帳簿保存法で定められた基準を満たした電帳法オプションにより、文書属性設定、文書属性での検索、ファイルの訂正削除ができない状態を維持することが可能です。
これにより、ストレージの管理者、および、現場担当者の業務負担を軽減し、効率性を高めることができます。
5. まとめ | ホット・コールドストレージの利用ならDirectCloud
更新頻度の高いファイルを保存する1次ストレージだけの運用では、大量に保存され続けるファイルにより容量が逼迫します。
これにより、作業効率の低下、ストレージ追加コストの増大などのデメリットが生じてしまいます。
しかし、アーカイブ用ストレージを導入することで、階層型ストレージの運用が可能となり、上記のような課題を解決に導きます。
一口にアーカイブストレージと言っても、オフラインアーカイブ・オンラインアーカイブがあり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社のファイル利用状況やビジネスモデルなどから使うべきストレージを選定することが重要です。
現場の生産性向上とコスト削減を実現するクラウドストレージは様々ですが、その中でも全社規模での導入のしやすさ、国内データセンター運用の安心感、すべての要件を満たす機能を提供するDirectCloudが特におすすめです。
以下の資料に、DirectCloudの仕様をまとめておりますので、ぜひご覧ください。