テレワーク対応やオンプレミスからの移行のために、クラウドサービスが採用されるケースが増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、「クラウドネイティブ」というワードが注目を集めています。
クラウドネイティブとは、どのような意味を持つ言葉なのでしょうか。
この記事では、クラウドネイティブの意味や必要とされる背景、クラウドネイティブを実現する方法などについて解説します。
クラウドネイティブとは
クラウドネイティブとは、「クラウドに最適化されたシステム」という意味を持つ言葉です。
単に「クラウド化されたシステム」という意味ではありません。例えば、オンプレミスのシステムを単純にクラウド環境に移行させただけではクラウドネイティブとはいえないため、注意しましょう。
「本来の」「生まれつき」などの意味を持つネイティブというワードが使われているように、はじめからクラウドで運用されるように作られたシステム、あるいはその考え方自体をクラウドネイティブといいます。
クラウドネイティブが必要とされる背景
クラウドネイティブが必要とされる背景には、システムの柔軟性が求められているという事情があります。
日本企業のシステムは要件に合わせて複雑にカスタマイズされているケースが多く、システムの拡張や更改が困難という課題を抱えています。
これでは市場の変化に柔軟に対応することができず、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。
また、複雑化したシステムは維持管理費が高額で、今後、保守運用ができる人材が不足するという予測もあります。
このような事情から、「経済産業省が公開したDXレポート2.2」では、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じると試算されています(2025年の崖)。
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一方、クラウドサービスは柔軟な拡張が可能です。標準化されたクラウドサービスに業務を合わせることで、システムの複雑化も防ぎます。
運用はクラウドサービスを提供している企業が担うため、保守運用の人材不足にも対応可能です。
また、地震などの自然災害が多い日本では、BCPの観点からもクラウドサービスが求められています。
オンプレミスでは災害対策が不十分なケースもありますが、クラウドサービスは仮想サーバーが冗長化構成となっており、データセンターも複数箇所に分散されているため、災害に強いという点も特徴です。
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クラウドネイティブのメリット
クラウドネイティブのメリットは、クラウドのメリットを最大限に受けられる点です。
オンプレミスのシステムをクラウドに移行しただけでは、クラウドのメリットがすべて受けられるわけではありません。
もちろん、サーバーの拡張が容易になったりインフラの運用コストが抑えられたりするというメリットはありますが、クラウドネイティブの方がより柔軟性があります。
クラウドネイティブは後述する4つの技術によって、より柔軟に、よりクラウドの特性を活かしたシステムが実現できます。
クラウドネイティブに代表される技術
クラウドネイティブには、4つの代表的な技術が使われています。
ここでは、それぞれの技術について解説します。
マイクロサービス
マイクロサービスとは、機能ごとにサービスを細かく分け、APIによってそれぞれのサービスを連携させてシステムを動かす設計概念です。
アプリケーションを機能ごとに細分化することで、サービスごとの開発やテストが実施しやすくなります。
機能をサービスごとに管理すると、障害発生時の影響を最小限に抑えられるという点もメリットです。また、マイクロサービスによってリソースの最適化や可用性の向上もしやすくなります。
サービスメッシュ
サービスメッシュは、マイクロサービスを問題なく機能させるために必要な技術です。
アプリケーションを細分化することで複雑になるサービス間の通信を管理するために使われます。
サービスメッシュによって、複雑な通信のトラフィックを最適化したり、通信をセキュア化したりすることが可能です。
宣言型API
宣言型APIとは、サービスに対して具体的な命令をするのではなく、「最終的に得たい結果」を指示するAPIです。宣言型の対になるのが命令型で、命令型は実行するコマンドを具体的に指示します。
命令型ではコマンドの実行が失敗すると別のコマンドを新たに実行させる必要がありますが、宣言型の場合はシステムが自律的に「あるべき姿」になるよう動作します。
そのため、ユーザーが状況に応じてコマンドを指定する必要はありません。
イミュータブルインフラストラクチャー
イミュータブルインフラストラクチャーとは、「変化しないインフラ」という意味です。従来のサーバーは、OSアップデートやセキュリティパッチの適用など、必要に応じて状態を変化させる必要がありました。
一方、イミュータブルインフラストラクチャーは、一度起動させたサーバーに変更を加えることはしません。アップデートなどが必要となった場合は、変更が適用されたサーバーを新規で立ち上げ、本番環境を乗せ替えるという方法を取ります。
従来の手法は、OSアップデートやパッチ適用は本番環境に与える影響を懸念して迅速な作業ができないという点が課題です。イミュータブルインフラストラクチャーはこの課題を解決し、複雑になる変更履歴の管理なども不要になります。
クラウドファースト・クラウドバイデフォルトとの違い
クラウドネイティブと似た言葉に、クラウドファーストとクラウドバイデフォルトがあります。
これらはクラウドネイティブと混同されることがありますが、異なる意味を持っているため注意しましょう。
クラウドファーストとは、「システムを構築する際はクラウドサービスの利用を優先する」という意味の言葉です。
クラウドバイデフォルトとは、クラウドファーストよりもさらに強くクラウドを推奨するもので、「システムの構築や整備に関して、クラウドの利用を第一候補とする」という意味で使われます。
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クラウドファーストとクラウドバイデフォルトはクラウド利用を推奨しているのに対し、クラウドネイティブはもう一歩踏み込んで「システムをクラウドに最適化する」という意味で使われます。
クラウドネイティブに適した開発手法
クラウドネイティブを実現するためのシステム開発には、適した手法があります。
ここではクラウドネイティブに適した開発手法を3つ紹介します。
DevOps
DevOpsとは、開発チームと運用チームが連携してシステム開発を行う手法です。
開発という意味のDevelopmentと、運用という意味のOperationsの頭の3文字を取って名付けられました。柔軟かつスピーディーな開発が可能です。
アジャイル
アジャイルとは、短期間の開発を何度も繰り返すという開発手法です。
設計・実装・テストを短期間で行い、その都度サービスをリリースします。要件変更に柔軟に対応できるため、常に変化する市場にも対応できる開発手法です。
リフト&シフト
リフト&シフトは、オンプレミスのシステムをクラウドに移行する際に用いられる手法です。
既存のアプリケーションをクラウドに乗せ(リフト)、その後クラウドに最適化するように改修する(シフト)という流れで開発を行います。
SaaSでクラウドネイティブを実現
オンプレミスからクラウドに移行するケースでは、既存システムをそのままクラウドに乗せ替えるケースも少なくありません。
IaaSやPaaSを使って、クラウド上で自社用にカスタマイズしたシステムを構築することも可能です。
しかし、クラウドネイティブを実現するなら、SaaSを利用するという方法もあります。
SaaSはソフトウェアをクラウド上で提供するため、最初からクラウドに最適化されたシステムを利用できます。
要件に合わせたカスタマイズを必要とするケースもありますが、業務をSaaSの仕様に合わせて、極力カスタマイズを避けるという姿勢も大切です。
経済産業省が指摘するように、日本企業のシステムは複雑にカスタマイズされすぎているという課題があります。
すべての業務をSaaSの仕様に合わせるのは不可能な場合、オンプレミスとクラウドを連携するハイブリッドクラウドなどを活用するという方法もあります。この方法なら、SaaSに移行できる部分からクラウドネイティブを始めることが可能です。
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ひとつのクラウドサービスだけでは既存システムの機能をカバーできないという場合は、SaaS同士をAPI連携するマイクロサービスを活用するもの有効です。
カスタマイズは必須だという考えもあるかもしれませんが、ビジネスの柔軟性を考慮すると、SaaSの仕様に合わせて業務フローをシンプルにしていくことが求められています。
ファイルサーバーのクラウドネイティブ対応ならDirectCloud
オンプレミスのファイルサーバーのクラウド移行を検討している場合は、クラウドストレージの利用がおすすめです。
法人向けクラウドストレージのDirectCloudは、ファイルサーバーからの移行に適しています。
DirectCloudはWeb APIを提供しているため、他のサービスとのAPI連携が可能です。
弊社が公開しているAPIリファレンスを活用することで連携についての情報を取得することができます。
■APIリファレンスページ
DirectCloudは、ファイルサーバーと同じく管理者側で権限管理を行うことが可能です。
部署や役職ごとにアクセスレベルを設定できるため、日本の組織文化にもマッチしています。
ファイルリンクの有効期限設定や7種類のアクセスレベル設定も可能で、単純なファイルサーバーよりもきめ細やかなセキュリティ対策が可能です。
また、データ移行ツールとして「DC Migrator」を提供しています。
ファイルサーバーのクラウド移行を検討する際、課題となるのがデータ移行です。長年運用しているファイルサーバーは、データ量も膨大になっていることが少なくありません。
DC Migrator を使って4台のパソコンから同時並行で移行作業を行うことで、Windowsのrobocopyを使用した同期よりも早く移行が完了します。
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料金体系がシンプルという点も、DirectCloudの特徴です。ストレージ容量ごとに月額料金が設定されており、初期費用はかかりません。
どのプランでもユーザー数は無制限のため、ユーザー数の増加にも柔軟に対応できます。
まとめ
クラウドネイティブとは、クラウドに最適化したシステムという意味の言葉です。経済産業省が警鐘を鳴らすほど、日本企業のシステムは複雑にカスタマイズされています。
ただオンプレミスからクラウドに乗せ替えただけでは、クラウドネイティブとはいえません。可能な部分からSaaSを活用し、カスタマイズ前提のシステム開発からの脱却を目指しましょう。
DirectCloudは、ファイルサーバーからの移行に適したクラウドストレージ です。複雑な業務システムに比べ、ファイルサーバーはクラウドに移行しやすいシステムといえます。
Web APIに対応しファイルサーバーよりもきめ細やかなセキュリティ対策が可能なDirectCloudの導入を、ぜひご検討ください。