テレワークへの移行やシステム運用負荷の軽減など、さまざまな事情でクラウドサービスの利用を始める企業が増えています。
総務省がまとめた「企業におけるクラウドサービスの利用動向」によると、2019年では約2,100社のうち、およそ1,300社(64%)ほどの企業がクラウドを利用していると示されています。
しかし、機密情報や個人情報などは社外にデータを保存しないよう、自社の情報セキュリティポリシーで取り扱いに関する規定をされているというケースは少なくありません。
このような場合でもクラウドサービスを活用できると注目されているのが、ハイブリッドクラウドです。
この記事では、ハイブリッドクラウドの概要やメリット・デメリットなどについて解説します。
ハイブリッドクラウドの導入事例も併せて紹介しているため、参考にしてください。
- 目次
- 1. ハイブリッドクラウドとは
- 2. ハイブリッドクラウドが注目される背景
- 3. ハイブリッドクラウドのメリット・デメリット
- 4. クラウドサービスとオンプレミスの使い分け
- 5. セキュリティポリシーの遵守と利便性を両立させる方法
- 6. ハイブリッドクラウドの活用事例
- 7. まとめ
1. ハイブリッドクラウドとは
まず初めに、ハイブリッドクラウドの概要について解説します。
1-1. プライベートクラウドとパブリッククラウド組み合わせたもの
ハイブリッドクラウドとは、プライベートクラウドやオンプレミス環境とパブリッククラウドを組み合わせることをいいます。
本来は別々で稼働している機能を組み合わせることで、それぞれのデメリットを補いながら利用できます。
例えば、オンプレミス環境を維持するとなると、導入コスト・運用コストがかかるというデメリットがありますが、パブリッククラウドを組み合わせることで費用が抑えられます。
反対に、パブリッククラウドはカスタマイズ性が低いというデメリットがありますが、カスタマイズが必要な部分はオンプレミスで開発することで補えます。
このように、ハイブリッドクラウドを使えば、いわば両者の「いいとこどり」が可能となります。
1-2. プライベートクラウドとは
プライベートクラウドとは、企業や組織専用のクラウド環境のことをいいます。
その中でも、パブリッククラウドの中に専用の環境を構築・提供するサービスもあり、こちらはホスティング型プライベートクラウドと呼びます。
1-3. パブリッククラウドとは
パブリッククラウドとは、一般のユーザーや企業向けに広く提供されるクラウドサービスのことです。
一般的に「クラウドサービス」というと、このパブリッククラウドのことを指します。
ユーザーはサーバーなどを用意する必要がなく、インターネット経由でサービスを利用できます。
システムの運用も不要で、導入コストや運用コストが抑えられる点も特徴です。
1-4. マルチクラウドとの違い
ハイブリッドクラウドと混同されがちな言葉として、マルチクラウドがあります。
マルチクラウドとは複数のクラウドサービスを組み合わせて利用することをいい、パブリッククラウド同士の組み合わせです。
一方、先述のとおり、ハイブリッドクラウドはオンプレミスとパブリッククラウドを組み合わせたもののことをいいます。
2. ハイブリッドクラウドが注目される背景
パブリッククラウドはインターネット経由で利用できるためテレワークとの相性もよく、システム開発や運用の手間やコストも抑えられます。
しかし、カスタマイズ性が低いため、すべてのシステムをパブリッククラウドに置き換えることは簡単ではありません。
その一方で、すべてのシステムがオンプレミス環境ではコストや運用負荷が高くなります。
このように、社内システムをパブリッククラウドとオンプレミスのどちらか一方に揃えるとデメリットが大きいため、両方を利用できるハイブリッドクラウドが注目されるようになりました。
ハイブリッドクラウドなら、パブリッククラウドに移行できるものは移行し、カスタマイズが必要なものや自社の環境内で管理すべきデータを取り扱うものはオンプレミスを使うというように区別ができます。
3. ハイブリッドクラウドのメリット・デメリット
ハイブリッドクラウドには、メリットも多くありますがデメリットもあります。
ここでは、ハイブリッドクラウドのメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。
3-1. ハイブリッドクラウドのメリット
ハイブリッドクラウドのメリットとしては、例えばストレージ容量を増加させたい場合、オンプレミス環境では自社で対応が必要ですが、パブリッククラウドであれば柔軟に容量の追加などが可能です。
また、パブリッククラウドとオンプレミスの両方にデータを保存しておくと、リスクの分散にもなります。
サイバー攻撃や災害などによって自社サーバーのデータが失われても、パブリッククラウド上にデータが残っていれば復旧可能です。
3-2. ハイブリッドクラウドのデメリット
ハイブリッドクラウドのデメリットとして、管理が複雑になるという点が挙げられます。
パブリッククラウドとオンプレミスが混在することになるため、管理すべき項目はどうしても多くなります。
複雑なシステム構成を把握して、パブリッククラウドとオンプレミスの両方に対応できる担当者を用意しなければなりません。
コスト管理が複雑になる点にも、注意が必要です。
コストを下げる目的でハイブリッドクラウドを導入したとしても、試算をしっかりしてサービスを選ばなければ、期待するほどのコスト削減には繋がらないケースもあります。
4. クラウドサービスとオンプレミスの使い分け
ハイブリッドクラウドを導入する場合、パブリッククラウドとオンプレミスの使い分けを検討しなければなりません。
使い分けのポイントは、カスタマイズの有無と情報セキュリティポリシーです。
自社専用にカスタマイズしたシステムは、クラウドサービスでは機能が提供されていないこともあるため、オンプレミスでの運用を継続する必要があります。
また、自社で定める情報セキュリティポリシーで、社外サーバーへの保存が禁止されているデータは、クラウド環境には保存できません。
一方、カスタマイズが必要なく、クラウドサービスで提供されている機能で対応できるものは、クラウドサービスに移行することで運用負荷を下げられます。
また、セキュリティポリシーに違反しない範囲のデータについても、クラウド環境に移行させるとインターネット経由で利用でき、テレワークの推進や利便性の向上に役立ちます。
5. セキュリティポリシーの遵守と利便性を両立させる方法
テレワークを導入する企業が増えている中、セキュリティポリシーで自社管理が義務付けられているデータについては、自社サーバーへVPN接続して業務をしなければなりません。
しかし、すべてのデータを自社サーバーに保存しておくと、本格的にテレワークを導入した際にVPNトラフィックが逼迫して業務に支障が出る可能性があります。
また、オンプレミスとパブリッククラウドを併用することで、トラフィックの分散を実現できます。
そのため、先述のとおり、セキュリティポリシーで禁止されていないデータに関してはクラウドサービスの活用がおすすめです。
可能な範囲でクラウドストレージを活用することは、テレワーク環境の利便性向上にもつながります。
ただし、セキュリティポリシーで禁止されていないからといってセキュリティ対策が不要というわけではありません。
業務で利用するクラウドストレージは、セキュリティが高いサービスを選ぶ必要があります。
一部のデータのみクラウドストレージを利用する場合、ハイブリッドクラウド化しておくと利便性や操作性を損なわずに済みます。
APIで自社サーバーとクラウドストレージを連携することで、セキュリティポリシーの遵守と利便性を両立させることが可能です。
5-1. DirectCloudはAPI連携可能なクラウドストレージ
ハイブリッドクラウドを実現させるクラウドストレージとしておすすめなのが、DirectCloudです。
DirectCloudは、APIコールのためのアプリケーションをユーザー側で開発することで、WebAPI連携が可能です。
また、組織のセキュリティポリシーに基づき、管理者側でファイル操作に関する制限を行うことができます。
そのため、ファイルサーバーと同様のセキュリティレベルを保ちながら、VPNを介したファイルサーバーへの接続トラブルを避けることが可能です。
そのうえ、DirectCloudをエクスプローラーにマウントすることで、ファイルサーバーと変わらないUIで運用することができるので、操作感においてユーザー側でファイルサーバーとの差異を感じることもありません(DirectCloud ドライブ)。
その他、ファイル共有におけるトラブルや利便性の低下が起こりやすくなるのも、テレワークの問題のひとつです。
例えば、複数人で資料をレビューしながら編集したいのにやりづらい、自宅のネットワーク回線は大容量ファイルをやりとりするのに帯域が十分でない、などの問題が考えられます。
DirectCloudにはファイルをローカル環境に保存せずにクラウド上で同時編集できる機能や、共有リンク1つで大容量ファイルをやりとりできる機能などがあり、利便性も兼ね備えています。
このように、DirectCloudはハイブリッドクラウドでセキュリティポリシーと利便性を両立させるのに適したクラウドストレージです。
6. ハイブリッドクラウドの活用事例
実際にハイブリッドクラウドを活用している企業は少なくありません。
ここでは、弊社DirectCloudを導入しハイブリッドクラウド環境を実現した事例を紹介します。
合同会社EXNOA様
国内最大規模のトラフィックを抱えるオンラインゲームプラットフォーム「DMM GAMES」を運営しながら、数多くのヒットタイトルを生み出しているパブリッシャーとしての側面も持つ合同会社EXNOA様は既存のファイルサーバーはそのまま運用しつつ新たにクラウドストレージ「DirectCloud」を導入しました。
DirectCloud導入前は、テレワークに移行した従業員の中で社内ファイルサーバーにVPN接続した際レスポンスが悪くなってしまうという声が上がっており、課題となっていました。
そのため、社内外におけるファイル共有にDirectCloudを活用することで、業務効率化を実現しました。
また、これまで利用していた自社開発のクラウドストレージはストレージ容量が500GBまでの制約がありましたが、DirectCloud導入後は気にすることがなくなり、83種類のログ管理機能によって内部統制の強化にも成功していらっしゃいます。
■事例の詳細はこちら
https://directcloud.jp/interview/interview30
7. まとめ
テレワークを導入するうえでパブリッククラウドは利便性を高めてくれるツールですが、企業のセキュリティポリシー上、クラウド環境への保存が禁止されているデータもあります。
しかし、すべてのデータが自社サーバーにあっては、VPNのトラブルなどによって業務に支障をきたすかもしれません。
このようなケースに対応するには、ハイブリッドクラウドが有効です。
オンプレミスとパブリッククラウドを使い分け、両者を連携させることで利便性も保てます。
DirectCloudならWebAPI連携が可能なだけでなく、オンプレミス環境のファイルサーバーと併せたハイブリッドクラウドとして運用した場合でも操作感で困ることなくシームレスに運用することができます。
テレワーク環境でも利便性を高める機能が備わっているため、ぜひご活用ください。