業務で利用するファイルや機密情報を安全に保存するために使われるファイルサーバーも、徐々にクラウド化を検討する企業が増えています。
安全性や利便性を考慮し、オンプレミスとクラウドを並行運用するケースもあれば、全面クラウド化に舵を切る企業もあります。
複数箇所に保存したデータを統合管理するのであれば、必要なデータをすぐに取り出せるようにする「データファブリック」の考え方が今のビジネスには欠かせません。
本記事では、データファブリックの定義やメリット、背景、事例などについて解説します。
- 目次
- 1. データファブリックとは
- 2. データファブリックが生まれた背景
- 3. 既存のファイルサーバーを全面リプレースする場合
- 4. まとめ
データファブリックとは
「データファブリック」は、オンプレミスやクラウドに点在するデータを、最適な場所に配置し、必要に応じて業務アプリケーションやサービスから対象データをいつでも取り出すことができるアーキテクチャや技術を表します。
「データ」の「織物(fabric)」という言葉から分かる通り、データの管理・転送・アクセス制御を柔軟に行うことができます。
データファブリックの実現のためには、機器やサービス単体ではなく、サーバー(ストレージ)やネットワーク、それらの上で動作するサービスなどを組み合わせる必要があります。
企業が持つデータの活用を促進するとともに、データの価値を最大限に高め、データドリブンな経営を推し進め、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させることがデータファブリックの目的です。
データファブリックで実現できること
データファブリックを通し、次のようなことが実現できます。
データの自由な転送・処理・管理・保存
もともと互換性のなかった複数のオンプレミスサーバーやクラウドの間で、自由にデータの転送や処理、管理、保存ができるようになります。
管理者によるアクセス制御も可能です。
分散したデータの統合
データの場所や保存方法によらず、すべてのデータにアクセスしてデータを収集・利用できる単一の環境の構築が可能です。
これにより効率的なデータ利活用を実現できます。
データソースの管理が可能
複数の環境(オンプレミスやクラウド、ハイブリッド、マルチクラウド)を、データソースおよびデータの利用者として管理できます。
データへのスムーズなアクセス
データ利用のためにデータクオリティやデータプレパレーションなどの機能(※)を組み込むことで、自動的にデータを使いやすい(クレンジングや整形が済んだ)形に処理して保存します。
データ取得後に処理を施す必要がないため、迅速にデータにアクセスして開発や分析などの用途に利用できます。
※データクオリティ:データの破損、表記揺れ、重複データなどの抽出・修正、外部データとの照合などを行い、データの品質を維持する機能・サービス
※データプレパレーション:データをシステムで読み込み可能な形に整えること
スケーラビリティの向上
保存・利用するデータ量や、使用するオンプレミスサーバーやクラウドサービスの種類が増えた場合でも、高速・容易な拡張やデータ移行を可能にします。
企業へのメリット
データファブリックの実現による、企業へのメリットには次のようなものがあります。
データドリブン型の経営がしやすくなる
保有するデータが統合され、活用しやすくなることによって、データ利用が活発になります。
BIツールや各種のインサイト提供ツールでデータを活用し、マーケティングや製品開発に活かすことができます。
また、開発現場でもテストデータや本番データへの接続がスムーズになり、開発効率の向上が期待できます。
セキュリティの向上
クラウドやユーザーに対して適切なアクセス制御を行いやすくなることや、データ操作(コピーや移動、共有、利用)に関するポリシーを定める機能があることで、組織のセキュリティレベルの向上が期待できます。
バックアップ・災害対策
複数のサーバーやクラウドの間で自由にデータが移動できることで、バックアップによる冗長化も効率的に行えるようになります。
複数拠点にデータのバックアップを作成することで、災害時のデータ損失のリスクを抑えることができるため、BCP対策ともなり得ます。
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システム運用管理者の負荷軽減
データファブリック環境では、データのバックアップやリソース管理、アクセス権管理やシステムの更新などの作業の多くが自動化・簡略化されています。
多くの作業はコーディングを必要とせず、管理コンソールで簡単に行うことが可能です。そのため、ユーザー数の増加や必要なリソースの増大、利用クラウドサービスの追加などから生じるシステムの運用管理者の負荷が大きく軽減されます。
新規テクノロジーの導入が容易になる
ITの世界では新しいテクノロジーが次々と生まれていますが、導入のためには機器のスペックやOS・ミドルウェアの種類などの要件を満たす必要があります。
多くのテクノロジーの中から自社に合ったものを探し、既存システムとの接続・連携可否を検証し、必要な機器の増強やソフトの導入、調整を行うといった一連の業務はシステム管理者の大きな負担であり、テクノロジーの導入が進まない一因になっています。
データファブリックでは、サービス提供事業者がこれらの業務をサポートしているため、システム内で新しく利用可能なテクノロジーが増えても、導入が容易になります。
データファブリックが生まれた背景
それではなぜ今になってデータファブリックが注目されているのか、その背景を説明します。
課題その1:データを統合管理する必要性
企業はマーケティングや製品開発などのために、顧客データや在庫データ、過去の売上データ、購買行動に影響すると考えられる気温や湿度のデータといったデータを活用するようになっています。
その結果、データの量と種類が増え、企業内ではさまざまなフォーマットのデータが散在していたり、部署ごとに同じデータファイルを保有していたりすることも少なくありません。
クラウドサービスの普及は、データの所在を分散させ、データの適切な利用や管理をさらに複雑にしています。
データ利用が企業の競争力を左右するからこそ、フォーマットや拠点の異なるデータを統合管理して効率的にデータを活用・管理したいというニーズが高まっています。
課題その2:DevOpsやハイブリッドクラウド・マルチクラウド上で統一的な開発環境を整える必要性
開発現場では技術分野でチームが分けられるのではなく、アプリ単位でチームが組まれることがあり、DevOpsやハイブリッド・マルチクラウドの環境で開発するケースも多くなっています。
スピーディーな開発によって製品・サービスの顧客価値を高めるためにも、データ環境のデプロイや運用を統一的に行えることが求められています。
既存のファイルサーバーを全面リプレースする場合
既存のファイルサーバーを全面リプレースする場合、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、クラウドを活用したパターンで一般的なものを紹介します。
同じストレージOSのオンプレミスストレージとクラウドストレージを新規導入
現在、ファイルサーバーのリプレースでは同じストレージOSのオンプレミスストレージとクラウドストレージを導入するケースが増えています。
管理のしやすさや、コスト、セキュリティなどの面でバランスが良いことが主な理由です。
ストレージの導入後は、旧ファイルサーバーからデータを移行し、企業のセキュリティポリシーおよび社員の用途に応じて権限設定を行って運用します。
全面SaaSに移行
オンプレミスのサーバーを廃止して、ファイルサーバーを全てクラウドに移行するケースも多くなっています。
コロナ禍でリモートワークを導入した企業が多くなりましたが、この場合、VPNで社内ネットワークにアクセスしてオンプレミスのファイルサーバーを利用するよりも、クラウドで利用できる高セキュリティのストレージであればセキュリティと利便性を両立できます。
SaaSに移行する場合は、クラウドサービスのベンダと契約し、管理者により基本的な設定を行った後にファイルサーバーからデータ移行を行います。
その後、企業のセキュリティポリシーや社員の用途に応じて権限設定を行って運用します。
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SaaSのストレージを利用するなら、DirectCloudがおすすめ
DirectCloudでは、従来のファイルサーバーの運用と同様に「管理者による権限設定」が可能で、会社のセキュリティポリシーに合わせた運用が可能となります。
また、エクスプローラーにマウントすることで普段と同じ使い慣れた UI・操作感でファイルの利活用ができるため、ユーザーへの導入もスムーズです。
DirectCloudでは、保存ファイルは国内データセンター上の仮想サーバーで管理されます。各サーバーはそれぞれ冗長化されておりAWS東京リージョンの3拠点にデータが分散保存されるため、災害などの不測の事態に強く、BCP対策を実現することができます。
また、データ移行ツール「DC Migrator」による高速なデータ移行や、データ移行サポートサービスも提供し、スムーズなリプレースを支援しています。
まとめ
データファブリックとは、オンプレミスやクラウドに点在するデータを、最適な場所に配置し、アプリケーションやサービスからデータを利活用できる技術です。
データ活用が企業の競争力を左右する昨今、企業のDXの基礎となるインフラの形として注目されています。
DirectCloudはファイルサーバー運用特有の管理者による権限管理を踏襲し、クラウドストレージに求められるファイル保管・ファイル共有も今まで通り行えるサービスです。
テレワークでクラウドストレージを利用する場合、ユーザー数や通信量が多くなりがちでコストが心配ですが、ユーザー数無制限で定額利用ができるのでテレワークにも最適です。
コストパフォーマンスの高さや利便性から、企業のファイルファイルサーバーと併用してハイブリッドクラウド環境を構築したり、全面クラウドへ移行したりする際にも利用されています。
ファイルサーバーのリプレースをお考えの際には、ぜひご検討ください。