情報の集約管理だけでは不完全!ライフサイクル管理に基づいたファイル管理の重要性を徹底解説

場所を問わない働き方が当たり前となった現代のビジネス環境では、これまで以上にドキュメントのやり取りが円滑にできるようにストレージの統合管理が推進されており、拠点ごとにファイルサーバーを設置するよりも利便性の高いクラウドストレージの活用が進んでいます。

しかし、最新のクラウドストレージを導入したとしても、ファイル管理方法が無計画では、データスワンプを生み出すだけになってしまいます。

このような業務推進の妨げになるデータのサイロ化を防止する方法として、このコラムではファイルのライフサイクル管理(ILM)に着目したコストダウンと生産性を高めていくファイル運用管理の考え方について説明していきます。

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1. 2025年には世界のデータ生成量が175ゼタバイトに到達

調査会社IDCによれば、2025年にリアルタイムデータの生成データ量が175ゼタバイト(1ゼタバイト=10億テラバイト)にまで増加するとされています。

出典:調査会社IDC:The Digitization of the World from Edge to Core

この数値は世界的なデータ量の推計になりますが、企業単位でも増え続けるデータに対応するため、ファイルの運用管理はこれまで以上に意識的に行う必要があります。

このような世界のデータ生成量が大幅に上昇すると見込まれる背景には、以下の要因が考えられています。

場所を問わない働き方の推進

企業形態や事業内容を関わらず、クラウドストレージを活用した場所を問わない働き方が加速しています。

そのため、分散保存による部分最適からシステム統合管理が主流となっており、場所を問わないクラウドストレージへのアクセスが急増するとともに、利便性が向上した結果、ファイルの保存数が増加しています。

従業員が様々なプラットフォームを利用している

PC、Mac、モバイルのほか、IoT機器なども加わり、多数のデバイスからストレージへのアクセスが増加傾向にあります。
蓄積されるデータも用途ごとに違い、情報の重要度も異なるデータが増加しています。

2. データ活用を推進していくにはファイル保存ルールの策定が重要

パブリッククラウドを活用している場合、フルスクラッチのように企業への最適化はされていないため、運用ルールを定めた利用が求められてきます。

また、無計画なままファイル保存や管理を行うと、階層型ストレージのメリットを最大限に活かすことができなくなります。
結果的に、かえってコスト増大やデータスワンプといった状態を招いてしまうリスクもあります。

一般的にファイル(情報)には、情報の生成から活用、削除といったライフサイクル(ILM)がありますが、このファイルのライフサイクルに着目したルールを決めて、ファイル運用していくことで、円滑なファイル活用を実現できる可能性が高まります。

データの保管のみならず廃棄ルールも決めておく

法令によって文書の保管期間が定められているなど、文書の属性次第で管理方法が変わる場合があります。

また、繰り返し使うことの無いファイルもライフサイクルに基づいた運用方法について、あらかじめルールを決めておくことが必要です。

3. 情報のライフサイクル管理(Information Lifecycle Management | ILM)の重要性

ここからは、ファイルを適切に運用していく際に役立つ考え方を紹介していきます。
まず初めに、「情報のライフサイクル管理(以下、「ILM」とする。)」について解説します。

ILMとは、「作成」「活用」「参照」「保存」「破棄」といった情報のライフサイクルに着目して情報(データ)を管理する手法のこと言います。

具体的には、再利用するファイルや廃棄する時期を決めるなど、一連のファイル活用にルールを付けることを指します。

このようにILMの考え方を流用することで、クラウドストレージに統合したファイル運用管理にも応用することができます。

例えば、経過日数に応じたアラート・自動削除ができたり、再利用する可能性のあるファイルは、ILMに基づいたストレージの保存領域への移動(自動・手動)も実現します。
ファイル名だけで管理できない場合は、タグを使った運用も有効な方法の一つです。

ここでは、ILMに基づいたファイル運用を行うポイントやメリットについて、解説します。

ファイルの鮮度に着目

一般的にデータには、利用頻度の高いデータ、すぐには使わないものの残しておきたいデータなど様々な用途のものが存在します。
基本的にデータは、上記図式のように、生成されてからある程度時間が経過すると、利用される回数が減少していきます。

また、適切にデータを管理していれば、保存ストレージはデータの鮮度に応じてホットストレージ、ニアラインストレージ、オフラインストレージ(or コールドストレージ)と変化していきます。

このようなルールを決めて運用することで、データの特性に応じた保存ができ、コストを削減しつつ生産性を向上させることが可能です。

保存領域を分ける

日々の業務で使用するファイルはホットストレージ領域で保存・活用し、削除まではいかないものの利用頻度の低いファイルはオフラインストレージ、もしくはコールドストレージに移して管理することで、ホットストレージの容量を逼迫することなく、データ活用を実現することができます。

また、ファイル特性に応じたストレージ領域の使い分けは、バックアップ時の作業時間削減にもつながるといったメリットもあります。

もっとも、アクセス頻度は低いがファイル容量が大きく、再生成に時間がかかる動画コンテンツなどはオフラインストレージとの相性が高いため、膨大な量の動画コンテンツを扱っている場合には、オフラインストレージの活用がおすすめと言えます。

通常利用の高速ストレージ領域から物理的な分離

保存する場所はフォルダなどの論理的に分離するほか、ストレージそのものを変える物理的な分離方法もあります。

通常時にアクセスができない物理的な分離はエアギャップとなり、利便性は大きく下がるものの、隔離されたストレージのセキュリティは向上するというメリットがあります。

4. バージョン管理の重要性

ストレージ領域圧迫の隠れた原因としては、不適切なバージョン管理(ファイルの履歴管理) が挙げられます。

バージョン管理機能が無いストレージを利用している場合、ファイルの新旧を区別できないため、重複ファイルによる無駄なストレージ容量の浪費が生じてきます。

バージョン管理機能がないストレージの場合、以下のような課題があります。

社内で複数のプロジェクト乱立

参照していたファイルが最新ではない場合、同じ目的のプロジェクトが社内で複数立ち上がる可能性があります。

また、関連するファイルがバラバラに保存されることで関連タスクの進捗状況が把握しづらい状況も生じてしまいます。

バージョンの見落としによる先祖返り

ILMに沿ったファイルのバージョン管理を実施していない場合、組織の生産性は大きく低下する可能性があります。

最も典型的な例として、ファイルバージョンの先祖返りが挙げられます。
先祖返りにより作業時間を大きく戻されることで、組織全体の生産性低下に繋がります。

先祖返り防止のためには、システムによるバージョン管理を活用することもポイントです。

マスターデータ管理(Master Data Management | MDM)による情報の整理

情報の特性によっては、基準(軸)となるデータを元にファイル運用を行う必要があります。

例えば、会員情報・価格情報・製品情報などはマスターデータを中心に作業を行うことで情報のブレがなくなります。

なお、マスターデータはバージョン管理が最も重要な情報となるため、運用は長期的なスパンで見る必要があります。

ストレージ選定の際に重要な要素となるバージョン管理機能

古くから用いられているバージョン管理の手法としては、規則性を持たせたファイルの命名ルール運用があります。

しかし、ファイル命名運用は毎回入力するのに負担がかかるため、ルールに従わない運用が取られるなど不確実な要素があるため、人の手ではなく、バージョン管理機能が提供されているストレージを使う方法も有効です。

5. 情報漏えい対策にも有効

ファイルの整理整頓をする目的の一つに情報漏えい対策があります。
組織全体で共通したファイル運用ルールが、ファイルごとの適切な情報管理、漏えい対策につながります。

具体的な方法として、以下のポイントがあります。

アクセス権・アクセスレベルの設定

セキュリティ対策として、シンプルでありながら最も効果的な方法として、ファイルへのアクセス権、アクセスレベルの管理があります。

アクセスできる領域を部門ごとに管理することで、ファイルが必要以上に散在することを回避できます。
また、アクセスレベルを制限することで、ファイルの改変を防ぎ、バージョン管理の精度を向上させることも可能です。

ただし、アクセス権・アクセスレベル管理のみでは情報持ち出し、改変への対応に限られるため、ファイル運用管理としては限定的な側面もあります。

エアギャップ外の隔離されたストレージへ移動

クラウドストレージへの統合に加えて、普段使わないファイルは物理的な分離(エアギャップ)を活用する方法もあります。

隔離されたストレージは、アクセス条件が厳しいため、利用頻度も下がり、利便性は大きく低下するものの、利便性との引き換えに情報の保護・保存期間については大きく向上します。

オフライン保管であれば、ランサムウェア対策に絶大な効果を見込め、テープメディアであれば、電力を消費することなく30~50年間の長期保存を実現可能です。

DLP機能を持つストレージでのファイル管理

DLP(Data Loss Prevention)機能を持つストレージであれば情報の持ち出しそのものを防ぐことができます。

DLPを有効活用するためにも、どのファイルがDLP領域への保存に最適か、事前にルール化しておくことでコスト削減につなげられます。

ランサムウェア対策

情報のライフサイクル管理においてもランサムウェア対策は重要です。

特に、ライフサイクルでの「参照(再活用)」のフェーズでランサムウェアに感染していないファイルが求められます。

前述したエアギャップを活用した隔離されたストレージでのデータ管理は、ランサムウェア対策でも有効です。
また、ストレージそのものにランサムウェア対策機能が提供されているものを活用することでより高度なレベルでランサムウェア対策を施すことができます。

6. まとめ | ストレージの有効活用に欠かせないILMに基づいたファイル運用管理

ここまで解説した通り、どれだけ高機能なクラウドストレージを導入しても、ファイルの運用管理方法が定まっていない状態ではデータスワンプを生み出す原因となるリスクがあります。

データスワンプを生み出さないためにも、ファイルのライフサイクル管理に沿ってファイルの運用管理・整理をすることで業務の生産性が向上し、コストも削減します。

また、組織全体で浸透することで情報の再活用も促進されるとともに、ファイルの統合管理によるストレージの階層化、災害(BCP)対策、バックアップなども実現します。

クラウドストレージの導入と合わせて、ILMに基づいたファイル運用管理を実施し、的確なデータ活用を実施することが重要です。

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