新型コロナウイルスの影響によりテレワークの導入が進んでいますが、テレワークではコミュニケーションが問題になりがちです。コミュニケーションの問題は、業務で必要な報連相だけではなく、教育や管理といった面にも暗い影を落としています。
テレワーク環境下において各企業では、コミュニケーションに関するトラブルへの予防や対策をどのように行っているのでしょうか。本記事では、テレワークで起こりがちなトラブルやその予防・対策などを紹介します。
テレワーク環境下でのコミュニケーションの実態
テレワーク環境下で、コミュニケーションはどのように変わったのかを見てみましょう。
テレワークをしている人の割合
2020年の総務省の「令和元年通信利用動向調査」では、2019年時点で企業のテレワーク導入率は20.2%となっています。2020年には新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、テレワークの導入率は急速に拡大していると見られます。
厚生労働省が2020年4月に行った調査の結果からは、テレワーク実施率は全国で51%、特に最も進んでいる東京都では60%という数字になっています。
コミュニケーション手段の内訳
総務省「令和2年版情報通信白書」によると、テレワークの増加に伴って、情報共有ツールやビデオ会議用ツールの利用が急速に拡大していることが分かっています。
ビデオ会議は複数人での音声・動画のコミュニケーションを可能にし、チャットツールは素早い情報確認や連絡ができることでテレワーク中のコミュニケーションの質を高めるために効果的です。
上記ツールの中には、業務用スケジューラーやタスク管理ツールとの連携機能などを備えたものも多く、部署やチーム単位でのスケジュールや進捗の共有、情報交換などに利用されています。
コミュニケーションのしやすさに関する割合
テレワーク用のツールによって、企業のコミュニケーションの質が向上したかと言えばそうとも言い切れません。
総務省「令和2年版情報通信白書」においては、「テレワーク(在宅勤務に限る)を実施してみて問題があったこと」の調査で「営業・取引先等との連絡・意思疎通に苦労した」、「同僚や上司などとの連絡・意思疎通に苦労した」などコミュニケーションに課題があったと回答した割合が18.9%に上ったことが発表されています。
新しいツールに慣れる必要があることや、テレワークならではのコミュニケーションの難しさは依然として残っていると考えられるため、各企業ではツールの導入にとどまらずコミュニケーション方法の工夫が必要不可欠な状況と言えるでしょう。
テレワーク環境下でのコミュニケーションにおけるデメリット
テレワーク環境のコミュニケーションでは、どのような点が難しく問題になることが多いのでしょうか。ここではよくある問題について解説します。
一般社員の不安
2020年3月にパーソル総合研究所がまとめた「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」によると、テレワークによって一般社員が評価やコミュニケーションに不安を感じている状況がうかがえます。
評価の面では「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安だ」「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安だ」と回答した割合が共に30%を大きく上回っており、大きな不安になっていることがわかります。
コミュニケーションについては、「非対面のやりとりは相手の気持ちが察しにくく不安だ」「相談しにくいと思われていないか不安だ」が共に30%を大きく超えています。
その他、仕事の割り振りやキャリア、出社している社員との関係など、幅広い面で不安を感じている様子がうかがえます。
管理職の不安
同じくパーソル総合研究所がまとめた「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」では、テレワーカーをマネジメントする管理職の不安についても調査結果が公開されています。
調査結果からは、評価やコミュニケーション、仕事の割り振りといった項目について一般社員よりも不安が大きいことが窺えます。また、業務の進捗状況への不安やトラブルはないか、長時間労働になっていないかといった管理者ならではの不安が非常に強い結果になっています。
一般社員・管理職とも、テレワーク中は周囲に自分しかいない環境で仕事を行うことになるため、孤独感を強く感じていることも同調査の結果からはわかります。特にテレワークの頻度が高い人ほど孤独感が強まる傾向にあります。
テレワーク環境下でオフィス環境と変わらない円滑なコミュニケーションを実現するための方法
テレワーク環境においては、オフィス環境では意識されなかったコミュニケーションに関わるさまざまな問題が出ています。オフィス環境に近い、円滑なコミュニケーションを実現するためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
おすすめのツール
テレワークで使用するツールは、情報共有を効率化してコミュニケーションを活性化することが求められます。情報共有を促進し、進捗状況の確認するのに役立つツールについてご紹介します。
チャットツール
まずはチャットツールが挙げられます。とはいえ、チャットツールは機能的に大きな差はありません。
しかし、対話する相手を中心にした製品とプロジェクト単位での利用を中心とした製品があり、企業の日頃の業務に最適な製品を選定する必要があります。
ビデオ会議ツール
ビデオ会議ツールは有料・無料を問わず多くの企業で利用されるようになっています。外部の人とビデオ会議をする必要がある場合は、相手側がスムーズに使え、セキュリティも高い製品を選ぶと良いでしょう。
画面共有を使えるものであれば、社内外問わずスムーズに情報共有することができます。
タスク管理・プロジェクト管理ツール
オンラインでタスクやプロジェクトの進捗を共有できるクラウドサービスはテレワークで非常に便利です。
カード型のタスク管理ツールはメンバーの仕事の割り振りや進捗を可視化できることからお互いの進捗状況を把握できます。ガントチャート型のプロジェクト管理ツールは、担当者もしくは案件ごとの進捗が可視化される他、スケジュール管理もしやすくマネジメントの効率化が期待されます。
ファイル共有ツール
テレワークにおいてファイル共有ツールは非常に大切です。ファイル共有ツールを選ぶ際には、情報の保存や閲覧、セキュリティといった機能面を重視することはもちろんですが、テレワーク時の情報共有における利便性まで考える必要があります。
DirectCloudはアクセスレベルを「編集者-」に設定することで、クラウド上のファイルをダウンロードすることなく直接編集することができます。また、Microsoft製のファイルであれば複数人での同時編集も可能なため、チーム内での共同作業もスムーズに行えます。
チャットツールを使用する際のポイント
テレワークで利用されることの多いチャットツールは使い方も大切です。円滑な運用のために次のようなポイントに注意してください。
チャットはこまめにチェックする
チャットの特徴はそのスピード感ですが、流れの速さによっては取りこぼす可能性もあるので、こまめな確認が必要です。
メッセージは短く
チャットでは要件を短くまとめることで、相手に伝わりやすくなります。
チャットで伝わらない場合は別のツールを活用
顔が見えない分、ネガティブな発言や否定的な見解を示すと、誤解を生みやすくなるため注意しましょう。チャットでも伝わらない内容がある場合は、個別に電話やビデオ通話を利用するのがベターです。
ビデオ会議ツールを使用する際のポイント
ビデオ会議ツールによる会議にやりにくさを感じる人も少なくありません。ビデオ会議を使用する際のポイントについて紹介します。
会議・ミーティングはこまめに行う
テレワークでは、間が空いてしまうほど状況がわからなくなり、会議やミーティングもしにくくなってしまいます。
部署やチームでの会議や小ミーティングは固定スケジュールで運用すると共に、何かあればすぐにビデオ会議で接続するような雰囲気を作りましょう。
役割分担を明確に
対面での会議でも同様ですが、役割分担を明確にしておくことが大切です。
会議環境を準備するメンバーや、司会者、議事録担当などは事前に決めておきましょう。また、できるだけ参加者が話す機会を作れるように運営の仕方を工夫することが大切です。
話し方、発言のタイミングに注意する
ビデオ会議では基本的に他の人が話しているときはミュートにしておくようにします。
また、話者は周囲の反応を待たずに話し続けてしまわないよう、ゆっくり話すとともに、短く内容を区切りながら周囲の反応を待って進めてください。聞き手も、話者が話し終わらないうちに意見をしたりしないよう注意しましょう。
進捗状況の共有に関するポイント
業務の進捗状況の共有は、テレワークで特に気になる部分です。進捗状況の共有についてのポイントは次のとおりです。
見える化を意識する
業務の進捗状況の共有は、見える化を意識して行うように心がけましょう。見える化することにより、ちょっとした空き時間に進捗確認がしやすくなります。
タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールは、業務の進捗を見える化してくれるものも多いです。
定例の報告会を行う
業務の進捗報告を管理者の都合で求めずに、定期的に行うようにしましょう。
チームや個人の単位で、毎週決まった日時に報告会を行うようにするなど仕組み化することが大切です。業務にも身が入りますし、報告用の資料も作りやすくなります。加えて必要時にはすぐにミーティングができる体制を作るとよいでしょう。
テレワーク実施企業のコミュニケーションにおける工夫点
テレワークをすでに実施している企業では、コミュニケーションにどのような工夫をしているのでしょうか。いくつか例を紹介しますので参考にしてください。
こまめに認識を確認
テレワーク環境では対面の場合と比べてコミュニケーションのための情報が少ないため、誤解が生じやすくなります。
議論の場では、ある発言に対する認識のずれがコミュニケーションのずれを生じさせることも多いため、前の発言についての解釈を述べ、話者に確認してもらうようにしているという企業もあります。
チャットのルールを記載
チャットについてのルールをチャット内のメモなどに記載する企業も多いです。
特に外部企業とチャットを通じてコミュニケーションをする際には、風習の違いからコミュニケーションロスが発生しやすいため、ルールを定めておくとよいでしょう。メンションについてのルールや、文頭・文末の挨拶の有無、スタンプや絵文字の可否などは事前に定めておくことで余計な気遣いが減ってコミュニケーションが円滑になります。
テレワークでは慣れも大切ですが、個人任せにせず、企業側で率先してコミュニケーションのルールを定めていくことが大切です。運用しながらユーザーの声を聞き、適切な形に調整していきましょう。
1on1の定期開催
1on1は、上司と部下が1対1で業務の報連相やキャリア相談などを行う時間です。
ある企業では、テレワーク導入後から定期的に1on1を行うよう各部門に指示しています。最初はぎこちなかったものの、続けるうちに1on1以外のコミュニケーションの頻度も高くなり、業務効率も向上。テレワークによる孤独感がやわらいだと感じる人が多いそうです。
まとめ
テレワークが広がっている中で、テレワークならではのコミュニケーションの問題に直面している企業も少なくありません。テレワークのコミュニケーションでは、仕組み作りとテレワークに向いたツールの利用が欠かせません。自社のテレワーク環境やコミュニケーションの仕方について見直し、よりよいものにしていきましょう。
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